選球眼、制球力は二の次 王貞治氏が憂う日本プロ野球の劣化
「イチロー以来、ヒットを打つことだけが評価されるようになった。だから今の打者は打数が多いだろう。自分の時代は300から400だった。四球を選んだからで、みんな選球眼が良かった」
少し前、王貞治ソフトバンク会長がある集まりで最近のプロ野球に関して、こんな話をしたという。そしてこう付け加えたそうだ。
「今は同点で九回2死満塁、カウント3-2からワンバウンドになるボール球を振る。見逃せばボールで(押し出しで)サヨナラ勝ちになるのに。それでもフォークボールは空振りしても当たり前、みたいな顔をしてベンチに戻ってくる。おかしいよ」
ワンバウンドのクソボールを振るなんて選球眼以前の問題だろうが、さすがは“世界の王”だ。その指摘は正鵠を射ている。評論家の高橋善正氏はこう言う。
「まったくその通りです。実は以前、王さんと同じような話をしたことがある。今は年間200本安打とかいって、打者はヒットを打つことが評価される。投手はスピードガンができてから、速いボールを投げることがすごいといわれる。選球眼とかコントロールが二の次、三の次になっている。ホームベースの1メートル手前でワンバウンドするようなフォークを投手が投げ、それを平気で打者が空振りするのは、そうした風潮と関係があります。少し前まではそんなボールを投げる投手もめったにいなかったし、また手を出す打者はいなかった」