「虚ろな十字架」東野圭吾著
■11年前に一人娘を殺され今度は母親自身が被害者
中学2年の少女と、1つ年上の少年の幼い恋のエピソードから、物語は始まる。
それから20年の歳月が流れ、事件が起きた。女性フリーライターが、自宅マンション近くの路上で、刺し殺されたのだ。ほどなくひとりの老人が自首、金目当ての強盗殺人を自白した。
殺された女性は、11年前、小学2年生の一人娘を失っていた。ほんの少し留守をしたあいだに、娘は自宅に押し入った強盗に惨殺されたのだ。被害者の遺族として苦しみ続けた彼女が、今度は自分が被害者になってしまった。
彼女は娘の事件のあと、離婚。別の道を歩んでいた元夫は、いや応なしに事件とかかわることになった。そして、別れたあとの妻の人生をたどり始める。
元妻はライターとして自立。万引依存症に悩む女性たちを取材したり、死刑廃止論に激しく異を唱えるなど、積極的に活動していた。彼女はなぜ殺されなければならなかったのか。事件は意外な展開を見せ、プロローグの幼い恋との深いつながりが浮かび上がってくる。