「ハリネズミの願い」トーン・テレヘン著、長山さき訳
ひとりぼっちのハリネズミは、今まで誰も招待したことがなかった。誰の誕生日でもなく、祝うことも何もなかったが、招待状を出そうと考えた。招待状の最後に「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」と書いた。
本当は誰にも来てほしくないんじゃないかと思われるかもしれない。そう思って手紙を戸棚の引き出しにしまった。もしかしたら誰も来ないかもしれない。〈いまは〉出すのはやめよう。〈まだ〉出すのはやめよう。〈当分〉は……。ハリネズミの心は〈いまは〉と〈まだ〉と〈当分〉の間を揺れ動く。みんないっせいに訪ねてくるかもしれない。かなり日のたった小さなケーキがひとつあるだけだ。
臆病なハリネズミの物語。(新潮社 1300円+税)