「オカンといっしょ」ツチヤタカユキ著
生まれてから一度も父親を見たことがない「僕」は、さまざまな「オカンの男」が出入りする家庭で育った。
あるときはヤクザの男、あるときは巨大ワゴン車に乗った男と、レンタルビデオを借りては返すかのように目まぐるしく変わる「オカンの男」との付き合いに疲れ、いつしか嫌いな人間を殺す絵を描いて過ごすように。
周囲から気味悪がられ、孤立したままやっと高校を卒業。
始めたアルバイトにも意味を感じることができなかったが、唯一熱中できたのは「ケータイ大喜利」への投稿だった。バイトを辞め、一日中引きこもって笑いのネタを考え、構成作家になる道を模索し始めるのだが……。
ハガキ職人から構成作家としてお笑いの道に入り、「笑いのカイブツ」で衝撃的なデビューを果たした新人作家による自叙伝的小説第2弾。
どこにいても学校になじめない転校生のような気分で生きてきたという著者が、今どん底にいる人に向けて自身の体験を赤裸々に描いている。
(文藝春秋 1200円+税)