「『価格』を疑え」吉川尚宏著
昨年6月、改正酒税法の施行に伴い、国税庁はビールの安売りに対する監視を強化。一般酒販店を大手スーパーなどの安売り攻勢から守るとの趣旨だが、結果としてビールの値上がりを招き、販売量は減少。一般酒販店と大手スーパーらとの価格競争力の差異も埋まっていない。
このように政府がわざわざ「安値」を禁じる動きがある。消費者にとって迷惑千万な「官製価格」は、他にも携帯電話料金や品不足が続くバター、鉄道運賃などでも見られ、今や春闘や株価まで官製化しつつある。著者はそんな「官製価格社会」化こそがアベノミクスの指針でもあると批判。市場からダイナミズムを奪う官製価格の実態と問題点を解説した警世の書。
(中央公論新社 820円+税)