「『生存競争』教育への反抗」神代健彦著
低迷する経済、衰退する一方の地方、そんな状況を打開できないままの政治――。そんな、誰もが将来に不安を抱く時代、子供に「生きる力」をつけさせたいという「親心」や、優秀な人材を取り込みたいという企業の姿勢はある意味必然である。しかし、その分だけ教育に過剰な期待や希望が託され、日本の教育界はかつてないほど改革の嵐に巻き込まれ、余裕をなくしている。
著者は、日本社会の問題をなんでもかんでも教育で解決しようとするのは的外れであり、社会問題の解決は社会全体で行うべきだと指摘。教育に期待すべきは「子どもを世界と出会わせる」ことだと説く教育学者が、そんな「社会の役に立て」という声に反抗を企てる「反社会的な教育学」のススメ。
(集英社 860円+税)