シネマライズ元支配人が語る「渋谷ミニシアターブーム」
「脚本うんぬんより、どこか“尖って”いることが大事。大ヒットした『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95年、インド)も、まだマサラムービーなんてほとんど知られていない時代の作品だけど、“来る”予感は感じられた。何しろ渋谷で大手がバックにない独立系の劇場は、うちとユーロスペースくらい。コケたらみんな食えないわけで、背負っているものが違うぞって自負はあったね」
「T2 トレインスポッティング」はスコットランドを舞台に、ヘロインに溺れながらもあがき続けた4人の若者の20年後を描いている。この間、前作に熱狂した渋谷の街も大きく変わった。ブームを牽引したシネマライズも、昨年1月に惜しまれつつ閉館となった。
「アート系映画を見る人々が年を取り、作り手も中高年向けに作品を作るようになり、質の高い尖った作品が減った。さらにバブル崩壊後、1800円の入場料が徐々に重荷になってきて、若者にミニシアター文化が受け継がれなくなってしまった。でもね、ダニー・ボイルはデビュー2作目で前作を撮って、その後どんどん腕を上げ、ついにオスカーまで取った。そんな彼があえて20年も待って作っただけあって、『T2』はホントに久々にいいと思える映画だよ」
背伸びして選んだアート系映画を観賞して内容はチンプンカンプンでも「なんかいいよね」とほほ笑みあえば、それでコト足りた幸せな時代が確かにあった。