大ヒット任侠ドラマ「日本統一」の仕掛け人 鈴木祐介氏が開いた新境地と“掟破り”な仕事術
今の形に固執せず挑戦し続けていけば、100作はそう遠くない
──このジャンルのウリであった濡れ場をカットした結果、「任侠女子」なる女性ファンが出現。
「うちわを振ったり、推しメンバーに黄色い歓声を送ってくださり、アイドルのイベントみたいです」
──最近はバディーものが、BL(ボーイズラブ)と見られ、盛り上がっている。
「驚きましたけど、考えてみれば任侠の世界は血もつながらない男のために男が体を張って、命も惜しまない。究極のBLなのかもしれません」
──主演兼プロデューサーの本宮泰風氏からは「鈴木さんは計算のできる変態」と評されています。
「任侠を演じるキャストに歌を歌ってもらったり、グッズをリリースしたり、LINEスタンプをつくったりTikTokまでしてますからね。本宮さんからは『悪ふざけ好き』と笑われてますけど、見てもらえるならば何でも。本気でふざけます。本宮さんは熱意の人ですし、キャスト、スタッフとのチーム力あってこそできる企画だと思ってます」
──熱意、結束、本気。どれも昨今あまり聞こえてこない言葉ばかり。
「居酒屋で仕事仲間と語ったりするのは、今やサラリーマンからも敬遠されているそうですけど、とても良い風習で、仕事の原動力になるのではないでしょうか。効率化とか合理化という風潮でいえば、『日本統一』は舞台裏もアナログですよ」
──今はコンプライアンスという「壁」も表現する際に立ちはだかる。
「いつの間にか、やりたい理由よりも、できない理由を探しがちになっているのは事実です。でも、それで萎縮してしまっては、何も始まりません。細心の注意を払いつつ、リスクを背負って新境地を開き、挑戦する。だから楽しく、充実する。仕事って、そういうものではないでしょうか」
──キャスティングは「バーター(抱き合わせ出演)」といった慣例、条件提示を持ちかけられても一切応じない。
「基準は『日本統一』に合うかどうか、というひとつです。所属事務所の大小とか、縁故は関係ありませんし、たとえフリーで無名であっても、作品に合えば出演オファーを出します。それらをとりたてて特別なこととは思ってません」
──シリーズは来年で10周年で現在、54作目。「ミナミの帝王」の全60作を超え、目指すは100作という金字塔か。
「私は映画の買い付けもしているのですが、何百本も見て、どこで買うか決めるかというと、面白いかどうかの一点なんですね。ドラマ制作でもそう。才能に恵まれていなくても、それが好きで、愚直に一生懸命、面白さを追求すれば、思いは伝わります。それと、本宮さんともよくお話しするのですけど、『日本統一』の合言葉は頑張っている人は見放さない。下からの声に耳を傾け、今の形に固執せず、挑戦し続けていけば、100作はそう遠くないと思います」
(聞き手=長昭彦/日刊ゲンダイ)
▽鈴木祐介(すずき・ゆうすけ) 株式会社ライツキューブ常務取締役。韓国・台湾の映画を中心とした映画バイヤーとしても精力的に活動している。新著「『日本統一』はなぜ成功したか? エグゼクティブ・プロデューサー鈴木祐介が初めて明かす、モンスターコンテンツの育て方」(ブックマン社)が話題。