「近代美学入門」井奥陽子著
「近代美学入門」井奥陽子著
近代ヨーロッパで美や芸術に関する思想がどのように生まれ、変貌してきたかを解説する入門書。
中世まで、ヨーロッパでは自然の景色は美しいものとしてとらえられておらず、風景の美は近代になって「発見」されたものだという。このように美や芸術に関する現代の「常識」の多くは、実は17~19世紀のヨーロッパで成立した価値観なのだそうだ。
それまで「アート」という言葉は「技術」を意味し、画家や彫刻家は職人とみなされていた。近代、「アート」が芸術を意味するようになって、同時に芸術家という言葉も生まれる。そして、芸術とは作者の内面を表現したものであり、芸術家とは独創的な世界を創造する天才であるという考えが広まる。
こうした芸術の概念が誕生したときにほかの技術から区別する特徴として考えられたのが「美」だという。
(筑摩書房 1210円)