「変わり兜 ―戦国のCOOL DESIGN」橋本麻里著
<戦国武将の兜に日本美の「B面」を楽しむ>
戦国武将たちが競うように作らせ、愛用した奇天烈な兜(かぶと)の数々を集めた写真集。
冒頭に登場する徳川家康の三河以来の忠臣、本多忠勝所用の「鉄黒漆塗十二間筋鉢兜(鹿角脇立付)黒糸威胴丸具足」は強烈なインパクトを放つ。兜から生えたかのように隆々とした2本の角がうねりながら頭上に伸びているのだ。
その他、後ろに下がらないことから「勝虫」との異名を持つトンボを前立に、邪気をはらうとされた「馬藺(ばりん)(ねじあやめ)」の剣状の葉を後立に放射状に配した「鉄錆地帽子形兜」などの昆虫をはじめ、ウサギの耳、サザエやカニの爪など生き物をデザインしたものから、本物のクジャクの尾羽を使った兜、兜の上に巨大な五輪塔がのっているものやロボットアニメを髣髴(ほうふつ)とさせるもの、果ては金剛杵(しょ)という古代インドの武器を握った力強い腕を模したものまで、前衛アートばりの大胆さに目を奪われる。
戦に命を懸ける武士たちは「自分をアピールするために、そして陣中に我こそありと敵を威嚇するために」こうした兜を身に着けたという。