「鳶 上空数百メートルを駆ける職人のひみつ」多湖弘明著
時に数百メートルにもなる高所で、狭い鉄骨の梁の上を自在に動き回り作業する鳶の仕事は、実際に足を踏み入れた者でなければ決して知ることができない、想像をはるかに超えた世界だという。あのスカイツリーの建設にも携わった現役鳶職人の著者が、そんな鳶の世界を紹介するフォトエッセー。
一口に工事現場といっても、そこには作業の進行状況に合わせ、さまざまな職種の職人たちが入り乱れ、働いている。そうした中にあって、鳶はその仕事内容のすさまじさから、かつては「神に近い存在」とされてきたという。
どの業者よりも先に現場に足を運び、仮囲い(工事現場の柵)を組み、建物の骨となる鉄骨を建てるためのタワークレーン、そして鉄骨を組む。命を落とすような危険な場所にも真っ先に乗り込み、他の業者のために足場を組む鳶がいなければ、工事は進まないのだ。
工事現場に欠かせないあの足場も、同じ場所・同じ用途であっても、組む人によって多種多様な足場ができ、職人の実力の差がはっきりと出る芸術作品なのだという。
そして「鉄骨建方」と呼ばれる鳶職人の腕の見せどころの鉄骨を組み立てる作業など、鳶職人の仕事の内容を著者自身が撮影した写真とともに紹介していく。