「境界の民」安田峰俊氏

公開日: 更新日:

 ファッションも話し方も、日本の普通のかわいい女子学生に見えるハウさん。彼女の父は1980年にベトナムから難民船で日本に来た。美香さんは父が日本人、母が中国人で日本国籍。日本の公立校と中華学校に学んだバイリンガル。日本人留学生として上海の大学に留学した。

「完全に日本人でもないし、完全にベトナム人や中国人でもない。国と国の境界線に立つ人たちという意味で『境界の民』という題にしました」

 そのほか、中国の少数民族ウイグル人や、中国・台湾・日本の近現代史に翻弄された老人、2014年の台湾でのひまわり革命の若者も登場する。

「少数民族や軍閥に興味があって、中国の福建省や広東省が好きでした。15年前、社会主義中国から週末に香港に買い出しにいくと、境界線を越えた瞬間に空気が軽くなった、それが原体験です。『国家未満』の政治体で生きた人、無国籍者、難民など、国民国家の枠から、はじき出された人たちを描きたかったんです」

 埼玉にある在日ベトナム人たちの寺院・南和寺で知り合った少女は、難民についてのテレビ番組が「無理やり、かわいそうなことを言わせてる」と不満そう。けれど、自らのアイデンティティーについて悩んでもいる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    演技とイケオジぶりで再ブレーク草彅剛と「10億円マンション売却説」中居正広氏との“絆”

  2. 2

    元ソフトバンク「伊奈ゴジラ」の転落人生…淡路島で盗み84件総額472万円、通算5度目の逮捕

  3. 3

    大関・大の里すでに「師匠超え」の鋼メンタル!スキャンダル報道もどこ吹く風で3度目賜杯

  4. 4

    米田哲也が万引きで逮捕!殿堂入りレジェンド350勝投手の悲しい近況…《苦しい生活を送っていたのは確か》

  5. 5

    テレ朝に“ナスD”超え「1億円横領」続々の過去…やりたい放題で解雇された社員のヤバい所業

  1. 6

    東洋大姫路・岡田監督が吐露「本当は履正社に再任用で残る予定で、母校に戻るつもりは…」

  2. 7

    かんぽ生命×第一生命HD 人生設計に大切な保険を扱う大手2社を比較

  3. 8

    山下智久「正直不動産」映画化でひと儲け狙うNHKに「甘い」の声も…山P人気は下降気味

  4. 9

    レイズ看板選手「未成年への性的虐待容疑」で逮捕も…ドミニカは殺人も銃撃も「無罪放免」の実態

  5. 10

    キムタク一家の妹Kōki,は映画主演の裏で…フルート奏者の姉Cocomiの話題作りと現在