「吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝」南條竹則著

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 19世紀末から20世紀にかけて、イギリスで爆発的な人気を誇った挿絵画家ルイス・ウェイン。日本人にはなじみが薄い名だが、彼の絵を使った絵はがきがあの夏目漱石の「吾輩は猫である」にも登場すると聞くと、急に親しみがわいてくる。

 ウェインの絵の特徴は、猫たちが擬人化され、時には服まで着て、人間と同じ表情や行動をしていることだ。

 漱石がロンドン留学していた時期は、ウェインの人気は絶頂にあり、彼の描いた猫の絵が本や雑誌、絵はがきにあふれかえり、作家の作品に何らかのヒントを与えたとも思われる。本書は、イギリス人の猫に対する見方を変えたといわれるそんな猫画家の人生を、作品と共に紹介するビジュアル新書。

 不登校児だったウェインは、23歳のときに家族の反対を押し切り妹の家庭教師だった10歳年上のエミリーと結婚。直後にエミリーが乳がんを患っていることが分かり、病床の妻を慰めるために飼ったピーターという白黒の子猫が、その後のウェインの運命を決めた。

 新聞の編集スタッフとして絵を描いていたウェインは、ピーターをモデルに猫のさまざまな姿態をスケッチ。そんなピーターを主人公に描き、勤務先の新聞に掲載された「我が家の猫たち、家庭の物語」や「子猫のクリスマス・パーティー」と題された作品は、一枚に描いたさまざまな猫にそれぞれ番号をつけ、面白いコメントが添えられている。この作品がたちまち大反響を呼び、名声が確立。当初は写実的に描かれていた猫たちだが、やがて2本足で立ち、服をまとい、同時期の人間たちと同じ行動をするようになる。

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