「文学者掃苔録図書館」大塚英良著
「掃苔」とは墓参りのこと。著者が250人の作家、詩人の墓をめぐり、彼らの作品に込めた渾身の思いを受け止めた20年の記録。
「蟹工船」の作者、小林多喜二は特高の拷問で殺された。老母は全身腫れあがった息子の遺骸を抱いて、「みんなのためもう一度立たねか」と叫んだ。築地小劇場で労農葬として行われるはずだった葬儀は、特高の妨害で中止となった。
詩人、劇作家の寺山修司は「墓は建ててほしくない。私の墓は、私の言葉であれば、充分」と言ったが、死後、母の手で高尾の山ふところに墓が建てられた。今は相克を繰り返した母と一緒に眠っている。(原書房 2800円+税)