「にょにょにょっ記」穂村弘著 フジモトマサル画
7月24日、「主婦の腿」からのお知らせ、というメールが届いて、著者はもわもわした気持ちになったという。
「サタンの爪」なら「悪のなかの悪」だし、「クレオパトラの瞳」なら「美のなかの美」だ。「娼婦の乳首」なら「エロのなかのエロ」だから分かる、と考えたとき、腑に落ちた。「主婦の腿」は「曖昧なエロのなかの曖昧なエロ」だと。「サタン」でも「クレオパトラ」でもない「主婦」の、「爪」でも「瞳」でもない「腿」の曖昧さがポイントなのだ。「悪」や「美」と違って「エロ」は突き詰めればいいものではないという、このネーミングの逆転の発想に著者は感銘を受ける。
歌人が日常を独特の視点でつづった絵日記。(文藝春秋 1500円)