宮城安総
著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

“ふうせん”で追う宇宙への夢

公開日: 更新日:

「宇宙を撮りたい、風船で。」岩谷圭介著

 私事で恐縮だが、小学生の頃、「自作の凧」揚げに熱中したことがあった。ビニールシートと竹ヒゴ製のシンプルな物だが、冬のある日、わが「会心作」を近場の高台で揚げてみた。米粒大になるまで上昇するも、手元の糸がなくなる寸前、強風に煽られ糸が切れた。凧は行方知れず。ひどく悔しく悲しい帰り道となった。

「これは、風船を使った宇宙撮影を何百回も失敗を繰り返しながらもなお、挑戦し続けるお話です。(略)まずは、『やってみる』から、はじめよう。これが夢を追いかける合言葉なのかもしれません」(「はじめに」から)。

 幼少期から学生時代をへて現在まで続く「ふうせん宇宙撮影」の活動記録。失敗してもなお次のステップへの手がかりをつかむ、著者自身の「成長物語」になっている。また、他者を巻き込みながら、「実験」が次第に「プロジェクト」化していく過程が興味深い。その書きっぷりも含め、真摯で地道な取り組みが好印象だ。

 四六判、ソフトカバー、本文224ページ、巻頭と巻末に8ページずつ、カラーの別丁が付く。巻頭部分では打ち上げから宇宙空間に到達するまで、巻末では地上へ落下する様子をコマ割りで順に紹介。個人、しかも手作りの装置によるとは思えない高画質な写真が並ぶ。一方、本文用紙には淡クリーム色の微塗工紙が選ばれ、インキの「乗り」も細部の再現性も良好だ。オモテ4色/ウラ1色刷りで、ここぞという場面で、見開き扱いで大きくカラー写真を配するなど「劇的効果」の演出に一役買っている。また、打ち上げ準備中のスナップ写真やこまごまとした機材、工具類もカラーで紹介するなど、丁寧な構成だ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

    元横綱・白鵬に「伊勢ケ浜部屋移籍案」急浮上で心配な横綱・照ノ富士との壮絶因縁

  2. 2
    スッカラカンになって帰国のはずが…ラスベガスのカジノで勝った

    スッカラカンになって帰国のはずが…ラスベガスのカジノで勝った会員限定記事

  3. 3
    西武激震!「松井監督休養、渡辺GM現場復帰」の舞台裏 開幕前から両者には“亀裂”が生じていた

    西武激震!「松井監督休養、渡辺GM現場復帰」の舞台裏 開幕前から両者には“亀裂”が生じていた

  4. 4
    なぜ15大会のスポンサー企業は日本女子プロゴルフ協会に“抗議文”を送ったのか

    なぜ15大会のスポンサー企業は日本女子プロゴルフ協会に“抗議文”を送ったのか

  5. 5
    1場所4人じゃ終わらない…元横綱白鵬の旧宮城野部屋勢“廃業ラッシュ”はこれからだ

    1場所4人じゃ終わらない…元横綱白鵬の旧宮城野部屋勢“廃業ラッシュ”はこれからだ

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    石原裕次郎(13)慶応病院に入院…同乗したエレベーターを降りる際に掛けられた言葉

    石原裕次郎(13)慶応病院に入院…同乗したエレベーターを降りる際に掛けられた言葉会員限定記事

  3. 8
    ミス・インターナショナル 特派員協会で「涙の訴え」のワケ

    ミス・インターナショナル 特派員協会で「涙の訴え」のワケ

  4. 9
    (26)第3作「男はつらいよ フーテンの寅」では寅さんを地面に叩きつけた

    (26)第3作「男はつらいよ フーテンの寅」では寅さんを地面に叩きつけた会員限定記事

  5. 10
    元衆院議員・若狭勝氏は女帝と断絶して7年「今は本当に幸せ」

    元衆院議員・若狭勝氏は女帝と断絶して7年「今は本当に幸せ」