“食品添加物のせいでパンはカビない”は勘違い
「食品添加物」には“体に有害”というイメージがつきまとう。しかし、そこに科学的根拠はあるのだろうか。三輪操著「食品添加物 ほんとうの話」(あさ出版 1300円+税)では、多くの消費者が誤解している、食品添加物の真実を解説。農林水産省の研究員を務めてきた著者が若い母親たちに授業をするというスタイルで、分かりやすくつづられている。
主婦の間で近年注目を集めてきた話題といえば、“なぜヤマザキパンはカビないのか”である。同社のパンには臭素酸カリウムという添加物が含まれており、そのためにカビないのだと囁かれてきた。しかし著者は、これは大いなる勘違いであり、未開封のパンがカビにくいのは徹底した衛生管理のもとで製造されているという単純な理由だとしている。
そもそも臭素酸カリウムは「小麦粉処理剤」であり、グルテンの性質を向上させてパンの食感をふっくらと仕上げる添加物。つまり、防カビ剤としての機能はないのだという。ちなみにヤマザキパンでは現在、“食感を良くする新たな技術を開発した”として、臭素酸カリウムの使用をやめている。
臭素酸カリウムはなぜ“悪者”にされてきたのか。実は、かつては魚肉練り製品にも添加されていたが、80年代に発がん性があることが指摘され、厚労省が使用を禁止したという経緯がある。そのため、“臭素酸カリウム=危険”というイメージが生まれたのかもしれない。
しかし、パンに限って現在でも使用が認められている。その理由は、臭素酸カリウムがパンを製造する加熱の工程で分解される性質を持つことが明らかになっているためだ。すべての食品添加物は現在、厚労省や食品安全委員会によるいくつもの厳しい試験をクリアしたものしか使用を認められない。そのため、噂に惑わされてやみくもに恐れる必要はないと本書。
食品に対して客観的な判断ができるよう、ぜひご一読を。