「鳥獣害」祖田修著
農業経済学者が近年、深刻化する一方の鳥獣害について論じたリポート。
公務を退いた後、京都の中山間地域で野菜やコメ作りを始めた氏は、カラスやシカ、イノシシに作物を食べられる被害に直面する。
鳥獣害の原因は、里山の荒廃や天然林の減少による動物たちの食べ物不足といわれるが、実は自然環境の回復に伴って、動物の分布範囲が拡大していることが主要因だという説もあるという。
事実、1990年代後半から、野生鳥獣の数が急速に膨れ上がっているそうだ。
地域の活性化を目指したモデル農業が、獣害によって破綻した島根県の例など、人と野生動物の戦いの実態を紹介。人間と野生動物の関係の歴史と今後のありようについて考察する。(岩波書店 820円+税)