「古来種野菜を食べてください。」高橋一也氏
古来種野菜――そう言われても、ピンとこない人が多いのではないか。現在、流通している野菜の多くは「F1種」と呼ばれる品種改良された一代交配種。流通しやすいよう、大きさ、味、収穫量が均一化され、タネが取れないものが多い。これに対し、人工的な改良が一切されていないものを「固定種」「在来種」などと呼ぶ。
「他にも『伝統種』『地方種』『原種』などさまざまな呼び方があり、どの野菜がどう呼ばれるのかはタネ屋さんで違うし、農水省も定義していません。だから、それら昔からタネが続いている野菜すべてをひっくるめて、『古来種』という言葉を作ったんです。花が咲いて、サヤができて、タネが作られる。そのタネをまたまいて芽が出る。一年中あるわけではなく、季節にしか収穫できない……それが古来種野菜です」
著者が古来種野菜と出合ったのは、自然食品会社勤務時代。バイヤーとして全国を飛び回っていたとき、出合ったのが、800年の歴史を持つ平家大根だ。
「形はふぞろいですが、見るからに野生的でエネルギーの塊。これを見た時、『あれ? じゃあ自分の扱っている野菜って何だろう?』と思わされました。農家の方は『収穫も大変だし、規格も合わない。でも、昔から続いている大事なものだから作っているんだ』と話していた。一代限りのF1種にはない歴史や伝統、作り手の哲学が詰まっている。それを絶やしてはいけないと思ったんです」