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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

黒木メイサ主演 NHKドラマは刑事&医療モノの“いいとこ取り”

公開日: 更新日:

連載コラム「TV見るべきものは!!」】

 22日にスタートした黒木メイサ(27)主演のNHKドラマ10「デザイナーベイビー」。

 ある病院で新生児が誘拐される。優秀な物理工学博士(池内万作)と、元トップアスリート(安達祐実)の間に生まれたノゾミだ。捜査に当たるのは妊娠8カ月の刑事・速水(黒木メイサ)。先週の初回は、早々に犯人と思われる夫婦が判明し、捕まえようとしたが……という展開だった。

 舞台となる病院が何やら怪しい。アリバイ不明の医師・須佐見(渡部篤郎)は、誘拐犯夫婦と因縁があるらしい。彼とライバル関係にある医師・崎山(渡辺いっけい)が手掛ける、高度生殖補助医療にも裏がありそうだ。

 高度生殖補助医療とは、卵子と精子の両方を操作して行う不妊治療。デザイナーベイビーの発想はその先にあり、遺伝子操作によって親が望む外見や知能などを持つ子供を生み出そうというのだ。

 “神の領域”だった部分に、医学がどこまで手を突っ込んでいいのか。技術面、倫理面での問題点も指摘されている。つまり、このドラマの特色は、刑事ドラマと医療ドラマのハイブリッドになっていることだ。誘拐も単なる営利目的ではないはずで、捜査陣は最先端医療の闇に触れることになるかもしれない。

 3年前、私生活で第1子の女児をもうけた黒木は、“妊婦刑事”役も実に自然。妊婦だからこそ見えてくる真実もある。やや複雑な設定ながら、新機軸の刑事ドラマが期待できそうだ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

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