「風かおる」葉室麟著
黒田藩藩士の三女に生まれた菜摘は、3歳で同じ藩の佐十郎の元に養女に出された。しかし、10年後に佐十郎が致仕したため実家に戻り、鍼灸師の亮に嫁いだ。夫から鍼灸術やオランダ医学を学んだ菜摘は、今では長崎に留学した夫に代わり患者の治療を引き受けていた。ある日、往診を頼まれ出かけた庵で、佐十郎と再会する。駆け落ちした妻とその相手を10年間追い続け、妻敵討ちを果たして帰郷した佐十郎は、重い病を抱えているようだった。菜摘は佐十郎が近々、ある人物と果たし合いをしようとしていることを知る。相手は、10年前に佐十郎に妻敵討ちをそそのかした人物らしい。
流転する男の人生を哀歓豊かに描く長編時代小説。(幻冬舎 1600円+税)