「異端者でいいじゃないか」菅原文太さんが国民に送ったエール
【日刊ゲンダイ新春特別インタビュー「ポスト震災を生き抜く」2012年1月1日号より】
あれだけの大震災と原発事故を経て、日本人の意識が違う流れに変わるかな、と期待したけど、変わらないな。何も変わらないと言っていいほど。戦後の日本はすべてがモノとカネに結びついてきた。そこが変わらないとな。
農業もそうだ。本来、人の命を養うための営みが、利益や効率を追い求めて、いつの間にか商業や工業のようになってしまった。JA全農のガラス張りビルが経団連の隣にあるのが象徴だ。おかしな話だよな。
俺は09年から有機栽培に取り組んできた。在来種を扱うタネ屋は数えるほどで、売られている野菜は「F1」といって一代限りで、タネを残せない一代交配種で作られている。農薬もハッキリ言って毒だよ。米軍がベトナム戦争で散布した枯れ葉剤のお仲間さ。極論すれば農薬と化学肥料とF1種で成り立っているのが、今の日本の農業じゃないのか。
その構図は原発とイコールだ。日本は高度成長に入る頃から、アメリカに「農薬を買え」「化学肥料を入れろ」と突き上げられ、ハイハイと従ってきた。農協が「大丈夫、安全だ」と農民にどんどん売って、60年代には、ヨーロッパの6倍、アメリカの7倍の農薬を農地に投入してきた。今や日本の有機栽培率は、たったの0・16%。中国以下なんて情けないよな。