バイオリニスト川井郁子の「空しい日々」を一変させた宮川泰
どの道であれ、究めようとすれば、壁にぶち当たる。バイオリニストの川井郁子さん(46)は英デビューから帰国直後の18年前、「自分が本当にすべきことがわからず、悩んだ」という。その時、出会ったのが作曲家で和製ポップスの第一人者、宮川泰さん(故人)である。
NHKのメーク室で鏡に向かっていたところ、「このアレンジはあいつだろ、難しいな!」などと大声で、怒鳴るような宮川先生の声が響いてきたのを、つい昨日のように覚えています。私は慣れないテレビ出演の緊張がさらに高まり、ドキドキしながら収録に向かいました。
先生が音楽監督をされていたNHKの「ときめき夢サウンド」という番組。バッハの「トッカータとフーガ」をロック調にアレンジしたものを弾かせていただいたんです。「宇宙戦艦ヤマト」の交響曲とか難しいお顔で指揮されていたので、とても厳しい方なのだろうなあと思いつつ、弓を取り、演奏し終えたときでした。
「いやあ、いい!」と満面の笑みで、真っ先に褒めてくださったんです。私の印象とは真逆の、とても温かく、いつも駄洒落を言って周りを楽しませようという方でした。