仏テロ背景の移民問題を浮き彫り 映画「サンバ」の出来ばえ
誰よりも勤勉で誠実なサンバは不法移民として貧困ビジネスに食い物にされ、一つ一つ選択肢を失い、未来を奪われてゆく。そこには救済の手などない。
もしこれが事実ならば、フランス社会の移民に対する冷酷さはとてつもないものがある。そしてこの冷たい人間関係こそが、都合よく安い労働力を輸入しようとした傲慢さのなれの果てだと本作は伝えてくる。
それでも移民を推進する日本の与党と経済団体には、もはや観賞を義務付けるしかないほどの、これは社会派の良作だ。
(映画批評家・前田有一)