広瀬アリスと門脇麦が演技で示した“1時間ドラマの条件”
日本放送作家協会主催「創作テレビドラマ大賞」は、新人脚本家の登竜門のひとつだ。17日にNHKで放送された「佐知とマユ」は2013年の大賞受賞作。作者の足立紳はその後、安藤サクラ主演の映画「百円の恋」を手掛けるなど活躍中だ。
ヒロインは20歳の佐知(門脇麦)。5歳の時、母親に捨てられた。絵を描くことが好きだが、スーパーマーケットのバイトで生計を立てている。ある日、常連客であるマユ(広瀬アリス)が部屋に転がり込んでくる。17歳の彼女もまた親の顔を知らなかった。奇妙な同居生活が始まるが、やがてマユの妊娠が発覚する。
1時間の単発ドラマは優れた短編小説のようなものでなくてはならない。たとえ短くても確かな物語世界が構築されていること。登場人物たちに、見る側が感情移入できる存在感があることなどが条件となる。
このドラマでは佐知とマユの関係だけでなく、佐知と15年ぶりに再会する母親(富田靖子)の関係、そしてマユと生まれてくる新たな命との関係などが重なり合い、影響し合いながら物語が展開されていく。しかも、現実社会の苦味をしっかり織り込んである。
また、既に演技力に定評のある門脇麦(22)はもちろん、広瀬アリス(20 広瀬すずの姉)も印象的だ。もがきながら生きる“見た目ギャル”を、まさに体当たりで演じていた。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)