漫画家・古谷三敏が語る 手塚治虫と赤塚不二夫の酒の思い出
赤塚先生は晩年、アルコール中毒だったのに、もとは一滴も飲めなかったんです。
ある時、高井さんと2人で新宿の会員制クラブ「竹馬」に、強引に赤塚先生を連れ出したんです。そうしたら、先生、すっごい気に入っちゃって、それから毎晩、ボクらに隠れて通い始めちゃった。
「天才バカボン」とか「もーれつア太郎」を描いて売れてたころかなあ。みんながヨイショしまくったから、気持ち良かったんでしょう。赤塚先生は、ヨイショされるの好きだから。それで、どんどん飲むようになっちゃった。
ボクはその後、ある編集者の薦めでモルトウイスキーが好きになり、スモーキーフレーバーの強いアイラモルト――ボウモア、ラガブーリン、カリラ、40代ではポートエレン1970にハマったんですよ。そのうち、家のサイドボードが酒の山になっちゃって。ある時、「一生かけても全部飲めないよな」と思い、「BARレモンハート」って店を始めたんです。
酒の漫画を描いていても、飲みながら漫画を描いたことはないですよ。読者に失礼だから。それに、2年ほど前にがんになったりして、近ごろでは1週間飲まないこともあります。だから、高くていい酒を少し、ですね。