世界の広さ知る 「クレイジージャーニー」の徹底現物主義
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
「クレイジージャーニー」は、とんでもない人たちが、とんでもない世界をのぞかせてくれる、とんでもない番組である。異世界への案内人は危険地帯ジャーナリスト、洞窟探検家、マサイ戦士の日本人妻など、普段は会うこともない人たちだ。
先週登場したのは写真家の伊藤大輔さん。ブラジルのリオデジャネイロにある「ファベーラ」と呼ばれるスラム街で暮らしている。ここはギャングの抗争が日常的に発生する危険地帯だ。
ビデオカメラを持ったディレクターが1人で現地を訪れ、伊藤さんの写真撮影に同行する。それはまさに銃撃戦があった日の夜で、ピリピリした雰囲気のギャング4人がカメラの前に現れるのだが、見ているこちらも目が離せない。
この番組のキモは徹底した現地・現物主義にある。めったに見られない光景や人物、どこかにあるかもしれない現実を実際に見せてくれるのだ。オーバーに言えば、世界の広さと深さに驚かされる。
スタジオには松本人志、バナナマンの設楽統、そして小池栄子の3人がいて、当事者であるジャーニーから直接話を聞く。展開されるトークには、ジャーニーに対する尊敬の念があり、スタジオの自由闊達な雰囲気はジャズの即興演奏に近い。視聴者に伝えてくれるドキドキ感など、テレビの原点みたいなものがこの深夜番組にはあるのだ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)