日本人警官がカンボジアでなぜ“戦死” NHKが真相に迫った
先週末、NHKスペシャル「ある文民警察官の死~カンボジアPKO 23年目の告白~」が放送された。扱われていたのは、1993年5月、カンボジアでPKO(国連平和維持活動)に参加していた日本人警察官が殺害された事件だ。
当時、カンボジア内戦の停戦を踏まえ、UNTAC(国際連合カンボジア暫定統治機構)の主導で民主的選挙が実施された。日本政府は自衛隊と警察官を派遣。戦闘は停止されていたはずだった。しかし、警察官たちはポル・ポト派とみられる武装ゲリラに襲撃され、高田晴行警部補(当時33歳)が命を落としたのだ。
番組では生き残った警察官たちが、23年を経て初めて「何があったのか」を証言していた。彼らが体験したのは、停戦合意も戦闘停止も建前に過ぎず、自分たちが標的となる“戦場”だったのだ。
しかも当時、UNTACも日本政府も、この事件をポル・ポト派の仕業とは認めず、あくまでも「正体不明の武装集団」だとした。また、「要員の撤収も考えない」と。今回初公開された現地で撮影された映像や警察官の日記も、カンボジアPKOの実態をよく伝えていた。戦うために行ったわけではない高田警部補だが、まさに“戦死”だったのである。
戦後の安全保障政策は、すでに大転換を遂げている。23年前の“真相”から学ぶべきことは多い。