大高宏雄
著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

「止められるか、俺たちを」映画好きなフーテン女と若松組

公開日: 更新日:

 17日は、若松孝二監督の6回目の命日だった。ついこの間のことのように感じるが、絶妙なタイミングである新作が公開されている。「止められるか、俺たちを」だ。1960年代末から70年代初頭にかけて、監督の製作拠点であった若松プロダクションを舞台にした作品である。

 本作は、若松監督のピンク映画時代の作品を見ている人とそうでない人では、印象がまるで違うだろう。当時の若松作品を支えた才人たち、足立正生、沖島勲、大和屋竺、小水一男、秋山道男、高間賢治、荒井晴彦らの名前を熟知している人は狂喜し、知らない人は「誰それ」ということになる。

 製作側も先刻承知だ。だから本作の主人公は、監督をはじめとするスタッフたちの映画製作の動向をじっくり見ている無名の女性助監督なのである。映画好きなフーテンの若い女性が、体制、権力を相手に闘争本能をむき出しにする男集団に入ったら、いったいどうなるのか。彼女を主人公にしたことで、あることが見えてきた。

 結局、若松孝二は謎だらけ、よくわからない人物だということだ。映画を見ない。本を読まない。商売上手。そんな男が、監督では天才的な力量を発揮する。監督含めた映画の謎が彼女を通して見えてくるのが何とも面白い。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 2
    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

    一人横綱・照ノ富士が満身創痍でも引退できない複雑事情…両膝と腰に爆弾抱え、糖尿病まで

  3. 3
    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

    ドジャース山本由伸いきなり「投手史上最高の465億円」は“佐々木朗希込み”の値段だったか

  4. 4
    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

    まともに相撲が取れない貴景勝いまだ現役の裏に「親方株問題」 3場所連続休場で9度目カド番確定

  5. 5
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  3. 8
    ドジャース山本由伸に降りかかる不正投球を疑う目 マウンドでの危険な振る舞いは命取りにも

    ドジャース山本由伸に降りかかる不正投球を疑う目 マウンドでの危険な振る舞いは命取りにも

  4. 9
    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  5. 10
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと