<第13回>親方は一度やったら辞められない
これらを合わせると、幕下以下の力士1人ごとに84万円+96万円で年間180万円に上る。つまり、人数に比例して収入が上がるため、親方もそう簡単に弟子をクビにできない。本来ならば出世の見込みのない力士には師匠が引退勧告をすべきだが、潔くそれができるのはほんの一握りだ。
さらに親方には最低でも年間約1200万円もの給料が支給される。所属力士が少なければ、給料を切り崩す必要も出てくるかもしれない。しかし、力士の体調より、空調の電気代の節約を優先させては本末転倒だ。冒頭の後輩力士は「ケチった分は全部、自分のフトコロに入れてるんですよ」とこう言う。
「ウチの部屋の力士は幕下以下だけですが、人数はそれなりにいますからね。2、3年前にはちゃんこ代を切り詰めていた部屋もありました。僕ら力士は山ほど食うし、それも仕事のひとつです。ロクに食えなけりゃ、力なんてつきませんよ。その部屋はちゃんこの食材が安物ばかりで、量も一般人並み。所属していた力士は『これじゃ倒れる』と、自腹で食べ物を買っていました。現在は改善されたらしいですが……」
もちろん、マトモな親方の方が多いとはいえ、力士のことを「私腹を肥やすための道具」としか見ない者もいる。これでは親方というよりは、置き屋の主人だろう。
(つづく)