常夏の島での野球留学の実態
ハワイの有名なワイキキから東に約25キロ、フリーウエーを使って車で1時間弱のところに「カイルア」という住宅街があります。89年のドラフトでダイエーからの1位指名を断り、マスコミから大バッシングを受けた僕は、その取材攻勢から逃れるためにハワイへの野球留学を決断。上宮高の卒業式の翌日に渡米し、向かった先がこのカイルアにあるホストファミリーの自宅でした。
カイルアは、今でこそ日本人旅行者にも人気の観光地になっているものの、当時は街灯もない田舎町。家から徒歩圏内にあるのは、日用品も扱う小さなお弁当屋さんが1軒だけという環境です。出発前は、高校の仲間に「いいなぁ、ハワイかよ」と羨ましがられましたが、とんでもありませんでした。
ホームステイ先のキャンディさん一家は、僕のためにトイレとシャワーがついた6畳ほどのプレハブ小屋を庭に建てて迎えてくれましたが、夫妻はともに高校教師で学校の行事やパーティーなどで夜に家を空けることが多い。そもそも、日本円で1カ月5万円だった家賃に食事代は含まれていません。晩ご飯は近くの商店で買いだめしたカップラーメンで済ませることがほとんどでした。