権藤氏が巨人と阪神の新監督に「コーチの見極め方」を指南
が、しかし、だ。冒頭に記したように、「最初だけ」「口だけ」にならないか、という心配を私は持っている。
指導者として30年近いキャリアを重ねた私はその間、8人の監督に仕えた。投手コーチとして呼んでもらった際、彼らは1人の例外もなく、「投手陣はおまえに預ける」「投手のことはすべて権藤さんにお任せします」と約束してくれた。が、実際に私の意見に耳を傾け、尊重してくれたのはダイエー時代の根本監督、横浜時代の大矢監督ら一握り。シーズンが始まると特に目の前の勝利に固執しがちな野手出身監督と、1年をトータルで考えて起用したい私とは相いれず、激しく衝突を繰り返したものである。
でも、ぶつかり合う人間がいるというのはまだマシだろう。コーチで最悪なのはイエスマン。監督の言うことに、はい、はいと追随するだけで、意見を言わない。これじゃ、いる意味がない。進言するフリをするコーチも同じように信用してはいけない。
例えば試合中盤、五回に入って先発投手の疲れが見え始める。そんなとき、「代えましょう」と言うコーチの意見は実は意見ではない。勝敗の責任を背負う監督は、ちょっとした投手の異変にも敏感になって、大丈夫かと不安を抱く。代えた方がいいか。代えない方がいいかと逡巡し、交代に傾いている監督の心理を分かったうえで、先回りするように「代えましょう」と背中を押す。意見を言っているようで監督に追随しているだけ。イエスマンと変わりはない。
代えるのは誰でもできる。我慢することの方がはるかに難しい。厳しい局面で「ここは我慢しましょう」と言うコーチは信頼できるものだ。
老婆心ながら、2人の新監督に伝えておこう。
(野球評論家)