白鵬にまた勝てず…稀勢の里“悪い癖”露呈で初賜杯遠のく
歓声が一瞬にして悲鳴に変わった。
11日目、結びの一番は全勝の大関稀勢の里(29)と1敗の横綱白鵬(30)。稀勢の里が勝てば先場所の琴奨菊に続く日本人優勝に一歩近づくとあって、場内には普段以上の声援が飛び交っていた。
しかし、勝負はあっけなく決まった。白鵬に立ち合いで左の張り、右のかち上げのワンツーを食った稀勢の里は、一気に土俵際まで寄られ、最後は抵抗むなしく寄り倒し。これで対戦成績は稀勢の里の13勝42敗。初優勝を狙うどころか、まだまだ白鵬にはかなわないことを露呈した。
稀勢の里は先日、力士や親方衆を驚かせたばかり。これまでは愚直な相撲しか取れず、技よりも力と体格任せ。それが9日目の琴奨菊戦で、立ち合いで当たると横に変化をしたのだ。これには敗れた琴奨菊が「あんな相撲じゃなくても勝てるのに」と愚痴をこぼせば、八角理事長(元横綱北勝海)も「初めて見た。今までは要領が悪いというか、正直過ぎたから」と、目を丸くしていた。
だからと、角界には稀勢の里を非難する声はなかった。多くの日本人力士は正々堂々、勝敗はもちろん、内容にもこだわった相撲が多い。それゆえに、奇策をためらわないモンゴル勢に翻弄されてきた。そうした経緯があるからこそ、稀勢の里の変化には「おまえもか」ではなく、「ようやく勝負に徹する気構えになったか」という期待が集まっていたのだ。