高い決定力 “弱虫”グリエスマンがフランス優勝のカギ握る
終わってみれば、キックオフ直後にフランス代表の主軸MFポグバがPKを献上し、格下アイルランドが先制点を奪ったことも、ホスト国の勝利を彩るパーツのひとつに過ぎなかった。
フランスで開催中の欧州選手権(ユーロ)。フランスは決勝トーナメント1回戦(日本時間26日午後10時開始)で0―1とリードされてハーフタイムを迎え、スタジアムに不穏な空気が漂い始めた。一掃したのが、後半からトップ下に入ったFWグリエスマンである。
58分、右サイドからのクロスを強烈ヘディングシュート! 同点に追い付いた3分後だ。192センチFWジルーが空中戦で相手DFに競り勝ち、その“落とし”を拾ったグリエスマンがフリーで利き足の左足を振り抜き、逆転ゴールをゴール右にズバッと決めたのだ。
現地で取材中のサッカージャーナリスト・元川悦子氏がこう言う。
「身長176センチ、体重67キロとフィジカル的には恵まれていないが、相手ゴール前でフリーになるための動きが秀逸な選手です。相手のマークを巧妙に外し、ボールが入ってくるコースを予測してシュート態勢に入る。これがグリエスマンの真骨頂です。シュートに関して言えばヘディングが強いし、左足から繰り出されるシュートのバリエーションも豊富。ゴールの枠内に蹴り入れる決定力も高い。ゴールを《取るべきところできっちり決めてくれる》グリエスマンがデシャン監督の信頼を得て、今後どんなプレーを見せてくれるのか、見逃すことはできません」
13歳でスペインのソシエダの下部組織にスカウトされた。異国暮らしに馴染めず、ホームシックで泣いてばかりだった弱虫グリエスマンが、フランスの16年ぶりのユーロ制覇の鍵を握っている。