五木寛之 流されゆく日々
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連載10665回 令和もまた右往左往 <3>
(昨日のつづき) いい具合にボケる。理想はそうなんだが、実際には至難のわざだ。 以前、脳トレの道具が流行ったことがあった。一時、塗り絵がすすめられたこともある。麻雀がいいという説は、まだ健在だ…
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連載10664回 令和もまた右往左往 <2>
(昨日のつづき) 80歳を過ぎると3人に1人がボケるという。本格的な痴呆とかアルツハイマー病でなくても、ごく自然にボケていくのだろう。 アンチ・エイジングという言葉が流行ったことがあった。アン…
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連載10663回 令和もまた右往左往 <1>
岡山へいってきた。 岡山市まで新幹線で行き、そこから津山線という在来線に乗る。終点の津山で降り、こんどは車で目的地の勝央町まで。かなりの強行軍だ。 天気はいいし、山々の緑や川の流れが目にしみる…
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連載10662回 内田裕也氏との対話 <5>
(昨日のつづき) 話が横にそれるが、1970年代というのは、いわゆるリトル・マガジンというのがすこぶる生彩のあった時代だったように思う。 地方のタウン誌も活気があった。いちど金沢で全国各地のタ…
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連載10661回 内田裕也氏との対話 <4>
(昨日のつづき) そもそもその時の対談のきっかけは、内田裕也さんが中村とうようさんにアプローチしたものだったようだ。 とうようさんに内田さんから電話がかかってきて、『猥歌』のパブリシティの件で…
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連載10660回 内田裕也氏との対話 <3>
(昨日のつづき) 対談の途中で、内田さんはこんなことを言いだした。「死」という問題を自分から出してきたのだ。 内田 神代さんは、死ぬ映画は誰でも撮れます、って言ってましたけどね。そうじゃなくて…
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連載10659回 内田裕也氏との対話 <2>
(昨日のつづき) 当時、内田裕也は個性派俳優として売れっ子だった。『猥歌』につづいて若松孝二監督の『水のないプール』にも出演していた。 『猥歌』は、にっかつロマン・ポルノの記念作品だから、当然、…
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連載10658回 内田裕也氏との対話 <1>
私は「対談」という事を、「執筆」と同じように大事な仕事だと考えている人間だ。 「書くこと」と「喋ること」と「問答すること」は、どれも表現の場として区別をつけずにやってきた。一冊の本も書かずに、スピ…
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連載10657回 仕事を怠けて本を読む <5>
(昨日のつづき) 4冊目の最後にとっておいたのが、『続於于野譚』(Ou―Yatan/柳夢寅作・梅山秀幸訳/作品社刊)である。 582ページのどっしりと重い大著だが、値段も3800円と重い。 …
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連載10656回 仕事を怠けて本を読む <4>
(昨日のつづき) 『沖縄アンダーグラウンド』を読み終えて、続いて手にとったのが、佐藤優さんの本、『友情について』(講談社刊)だった。不思議な縁だな、と、ふと感じた。たしか佐藤さんの御母堂は沖縄の出身…
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連載10655回 仕事を怠けて本を読む <3>
(昨日のつづき) 『沖縄アンダーグラウンド』(藤井誠二著/講談社刊)は、もう一つの戦後史として貴重な一冊である。350ページ近い労作だが、沖縄の語られざる深部を掘りおこして余すところがない。 歴…
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連載10654回 仕事を怠けて本を読む <2>
(昨日のつづき) 『日本進化論』は、机の上で書かれた論文ではないところに特徴がある。小泉進次郎氏と著者が共同企画した「平成最後の夏期講習」という催しがきっかけになったのだそうだ。それがニコニコ動画で…
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連載10653回 仕事を怠けて本を読む <1>
私の仕事は本を書くことである。本を読むことではない。 だから読書というのは、私にとっては怠けることである。原稿の締め切りをすっぽかして、読書に逃避するというか、本に逃げこむわけだ。 そんなわ…
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連載10652回 ボケない工夫よりも <5>
(昨日のつづき) 一時期、アンチ・エイジングという言葉が流行したことがある。 当時から私は、そのアンチという表現になにか抵抗をおぼえるところがあった。いくらNO!といったところで自然のなりゆき…
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連載10651回 ボケない工夫よりも <4>
(昨日のつづき) すべての人間は老化する。 それはエントロピーの真理である。鋼鉄が錆びていくように、人間も錆びていく。それを止めようとしても無理だ。しかし、少しだけ老化をおくらせることはできる…
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連載10650回 ボケない工夫よりも <3>
(昨日のつづき) きのうの本紙(日刊ゲンダイ5月14日付)を眺めていると、痴呆症関係の記事のオンパレードだ。 15面のトップに<認知症発症のメカニズム・第3弾>として大きな記事がのっている。ア…
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連載10649回 ボケない工夫よりも <2>
(昨日のつづき) 人間は高齢に達すると自然にボケていく。 これは病気ではない。変化というべきだろう。 問題はボケない工夫ではあるまい。そうではなく、良くボケることが大事なのではあるまいか。…
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連載10648回 ボケない工夫よりも <1>
「人生50年」といわれていた時代は遠く過ぎ去り、いまやその後の50年を真剣に考える必要がある。 現代の「3K」は、「健康」「金」「孤独」の3つだろう。 そのなかでも、健康については誰もが不安を…
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連載10647回 古い上衣とは何か <4>
(昨日のつづき) いま思い出しても恥ずかしい限りだが、高校に入学して、すぐにテニス部にはいった。 映画『青い山脈』の影響は、田舎の少年に圧倒的な影響をおよぼしたのだ。テニスのラケットを持って頬…
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連載10646回 古い上衣とは何か <3>
(昨日のつづき) 〽古い上衣よ さようなら というのは、もちろん映画『青い山脈』の主題歌の一節である。 しかし、そのフレーズを口にしても、何のことだろうとけげんな顔をされるようになった。…