黒木華「重版出来!」 脇役陣と繰り広げる“技の掛け合い”
黒木華(26)の連ドラ初主演となる「重版出来!」。タイトルは「じゅうはんしゅったい」と読む。
重版は本など出版物の増刷のこと。増刷になれば、いわばお札を印刷するようなもので、出版社が儲けるのはそこからだといわれている。また重版出来は多くの読者を獲得した証しであり、著者や版元の達成感も大きい。
主人公はコミック誌の新米編集者・黒沢心(黒木)だ。柔道の日本代表候補だったバリバリの体育会系女子。頑健、元気、明るさ、さらに勝負勘も武器になる。先週の初回では大御所漫画家(小日向文世)の引退危機を、持ち前の鋭い観察眼で救っていた。
映画「小さいおうち」や大河ドラマ「真田丸」での“和風でおっとり”とは大きく異なるキャラクターのヒロインだが、黒木はコメディエンヌとしての才能も発揮しながら生き生きと演じている。
また脇を固める編集部の面々が豪華だ。指導係の先輩がオダギリジョー、編集長は松重豊、編集部員として安田顕や荒川良々、そして社長は高田純次だ。これらクセ者たちが繰り出す芝居の波状攻撃を、黒木は一人で受けて立ち、きっちりと技を返している。とても連ドラ初主演とは思えない。
漫画家の世界やコミック誌の現場を垣間見られる“お仕事ドラマ”として、また20代女性の“成長物語”として、先が楽しみな一本だ。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)