元天才女流棋士・林葉直子さん 自己破産、肝硬変…余命一年からの復活

公開日: 更新日:

林葉直子さん(棋士、小説家/53歳)

 7月3日、史上最年少防衛・九段昇段を果たした藤井聡太棋聖。将棋ファンならずとも気になる存在だが、1980年代から90年代にかけて話題をさらっていたのは「将棋界のアイドル」林葉直子さんだ。当時、史上最年少の14歳3カ月で女流王将を戴冠し、10連覇。さらにモデル顔負けの美貌で、新聞、テレビ、週刊誌に引っ張りだこだった。

 ◇  ◇  ◇

「最初に『重度のアルコール性肝硬変』って診断されたのは今から18年前、2003年でした。担当医は目を丸くしてましたね。だって検査したら、女性のγ-GTPの平常値が30前後のところ、1200IU/L超もあったんですから」

 こう言うと、林葉さんはコロコロと笑った。会ったのは福岡県福岡市郊外。写真の通り、高須クリニックでBカップからFカップへと豊胸手術をして出版したヘアヌード写真集「罰 NAOKO HAYASHIBA」(モッツ出版、2001年)当時の面影はなく、かなり痩せている。アルコール性肝炎は、長期にわたる大量の飲酒が原因で肝臓に炎症を起こす病気だ。

 その後、一進一退を繰り返していたが、13年には肝機能がチャイルド・ピュー分類のグレードCまで低下。「余命1年」と宣告されたこともあったという。

「体重は今、40キロほど。5年前の一番体調が悪い時は37キロでしたから、少し太ってはいるんです。現在はグレードA。イメージで言うと、私の肝臓はコンクリートブロックからスポンジくらいまで柔らかくなり、機能が回復したってところですね」

 アルコールに溺れたのは、98年に大きな話題となった中原誠・永世名人との不倫騒動の直後。もともと「ビールは水」と公言するほどの酒豪だったが、憂さ晴らしのため毎晩、ウイスキーを1本空けるのが日課となっていた。

「自制して体調が良くなると、また飲んで悪化。その繰り返しでした。04年に六本木でインド料理店を経営していた時は、お客さまとのお付き合いで朝まで飲むこともありましたし、原作をしていた将棋漫画『しおんの王』を月刊アフタヌーン(講談社)で04年から08年まで連載していた頃は、ストーリーに詰まるとついつい飲んでましたから」

「もっと将棋を一生懸命やっておけばよかった」

 この間、亡くなった父親が残した借金が原因で、9800万円で建てた共同名義の自宅が差し押さえられ、06年に自己破産。精神的にも追い詰められた。

「どん底だったのは13年ですね。もうダメかもって思い詰め、遺作のつもりで書いたのが、14年2月に出版した『遺言―最後の食卓』(中央公論新社)でした」

 その頃から心機一転。酒をキッパリやめ、処方薬をきちんと服用するとともに塩分を徹底して排除する食事療法を実行した。

 例えば刺し身を食べるのも、醤油ではなく「リンゴ酢と黒酢、それに蜂蜜を混ぜた」林葉流特製酢。

「納豆は付属のタレだと塩分が濃いので減塩ケチャップをかけ、キャベツの千切りがご飯代わり」という徹底ぶりだ。

「頑張った甲斐があって今もこうやって生きています。まあ同居してる77歳になる母を置いて、先に父の元に行くわけにはいきませんけどね(笑い)」

 取材の途中、40代くらいの女性から声をかけられた。

「林葉先生ですよね。学生の頃、先生が書かれた『とんでもポリス』シリーズの大ファンでした」

 同シリーズは現役棋士時代に18冊発刊したベストセラー。他にも全部で40冊以上の小説を書いている。

 もちろん将棋は「直感で勝負」と言いながらも、女流王将10連覇を達成するなどすこぶる強かった。テレビドラマ、CMにも出演した人気タレントでもあった。

「でも今振り返ると、もっと将棋を一生懸命やっておけばよかったかな、って思いますね」

 取材後、福津市にある創建1600年を誇る古社・宮地嶽神社へ。ここは林葉さんが幼い頃からたびたび足を運ぶパワースポット。16年に放映されたアイドルグループ・嵐のJALのCMで玄界灘に沈む夕日と参道が一直線になる「光の道」が紹介され一躍、全国区的に人気となった。

 林葉さんは参拝後、守札授与所でおみくじを引いた。

 出たのは、大吉。子供のようにはしゃぐ林葉さんに詳細を尋ねると、「な・い・しょ」といたずらっぽい笑みを浮かべた。 

(取材・文=高鍬真之)

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