DeNAラミレス監督に聞いた 「捕手に配球サイン」の真意は
10年連続Bクラス球団を託された史上最強助っ人監督が就任から、チーム改革を打ち出している。アレックス・ラミレス監督(41)自ら捕手へ配球のサインを出し、昨年は不調だった山口俊を開幕投手、選手会長に大抜擢した。その意図は何なのか。キャンプ地で話を聞いた。
◇ ◇ ◇
――現役時代からの夢だった日本プロ野球の監督に就任しました。
「本当に素晴らしい時間を過ごせている。こんなに早く監督になれるとは思わなかったけれど、これまで準備してきたつもり。監督として成功できると信じているよ」
「コーチは日本人で」
――コーチ人事については、全員が日本人コーチになりました。外国人コーチなど、呼びたいと思うコーチはいなかったのですか?
「組閣のことはGMの高田さんにお任せした。与えられた中で自分が適応できればいいと思っている。実際に『コーチ陣は全員、日本人で結構です』と伝えたし、『チームを用意していただければ、あとは自分がマネジメントするだけです』という話をしたんだ」
「山口はナンバーワン」
――昨年は3勝6敗と不調だった山口俊を早々と開幕投手に指名、選手会長も託しました。その意図を教えてください。
「山口は、僕が現役時代に一緒にプレーしていて、そのときからグレートな潜在能力を持っていると感じていた。チームでナンバーワンの投手だと思っている。実際に抑えとして4年間で100セーブを挙げた実績もある。先発に転向して昨年は苦しんでいたのもわかっているけれど、本人のモチベーションを考慮した時に、今年が開幕投手、選手会長という役割を与えるタイミングとしてはベストだと考えた。彼はどういう状況でどんな反応、投球をするか、僕自身わかっているつもりだよ」
■「捕手で勝ちたいんだ」
――そして、捕手の意識改革を掲げました。「捕手には打撃力と高いIQは求めない。ベンチから試合をコントロールする」と。実際、練習試合でも場面に応じて捕手に配球のサインを出しています。
「チームが10年連続でBクラスという事実がある中で、勝つためには何かを変えなければいけない。ベイスターズは若い選手が多く、また攻撃力に関しては十分にあると思っている。だから捕手の部分で勝ちたい。まずはしっかりボールを受けて、スローイングができれば、あとはこちらでコントロールができる」
――捕手は配球の選択権を奪われます。さぞかし悔しいとは思いますが、それでもまずは基本的な守備を鍛えてもらいたいということですか?
「昨年はパスボールがリーグ4位(11個)だった。投手の立場からすれば、スライダー、フォークといった自分にとっての決め球になるボールを自信を持って捕手に投げることができなくなってしまう。そうなると、どうしても捕球しやすいストライクゾーンで勝負しないといけない。相手打者も配球を読みやすくなる。そういうところをまずは改善したい。捕手がしっかりボールを捕ってくれれば、投手も自信を持って投げられる」
――ベンチからサインを出す、という点では、98年に日本一を達成した権藤博元監督がそうでした。最初の1球から最後の1球まですべて指示をしましたが、一方で捕手には「試合の中で自分がこれだ、と思う選択肢があれば自分の感性を信じなさい」とも言っていました。
「たしかに、それはアイデアの一つだと思う。ただ、僕の場合はベンチからサインを出すと同時に、捕手にはIQの面でも成長してほしいと思っている。シーズン当初は多めにサインを出して、後半戦に入ったくらいの段階で捕手にすべてを任せるという可能性はある。投手には独自の感覚もあるから、投手の判断に任せることもゼロではないと思うよ」
――ベンチからサインを出すとなると、ゲームのテンポが遅れるという懸念もあります。
「それは実戦をやっていく中で、調整していけばいいと思っている。今は審判も試合のスピードアップを求めているし、シーズン前にはタイミングも掴めると思う」
「押しつけはしない」
――捕手の配球といえば、監督は現役時代から研究熱心でした。配球の研究については、どんな指導をするつもりですか?
「現役時代はたしかによく研究したけれど、自分としても考えすぎていた部分もあったと思う。それに、自分はそれで結果を残すことができたけど、すべての選手に合うとは思っていないからね。そもそも、選手にはアドバイスをすることはあっても、考えを押し付けるつもりはない。アドバイスに対して選手が疑問を感じることがあったら、お互いが話し合ってよりよい答えを探すことができればいいと考えているんだ」