渾身ルポ 原発禍の街を行く
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<第15回>原発で儲けたのは町ではなく県だった
3.11後、日本は法治国家ではなくなった――。双葉町の前町長・井戸川克隆氏はこう指摘する。「被告席に座るべき悪代官が飢饉で喘ぐ百姓を脅して、年貢米を強要する構図と同じだ」というのだ。 「例えば…
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<第14回>福島県民が苦しんでいるのは「風評被害」ではない
2005年に双葉町の町長に初当選。09年に再選した井戸川克隆氏は、規定の3割の報酬しか受けずに町の財政再建に取り組んだ。交付金欲しさに原発の増設を要請したこともあると告白する。 「ただし、私は…
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<第13回>「被曝で鼻血は大勢いる」発言に一方的な否定&批判
この4年間、原発の町・双葉町の前町長・井戸川克隆氏は「脱被曝」を訴えているが、苛立つ毎日を送っているという。 例えば、1年前に「被曝して鼻血を出す人は大勢いる」と発言。それが「週刊ビッグコミ…
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<第12回>思い切った行動に出始めた被災者たち
毎週金曜日の夜、首相官邸前で行われる反原発集会では、多くの人が「福島返せ!」「再稼働反対!」のシュプレヒコールを繰り返す。私も取材を兼ねて参加するが、顔見知りの初老の男性に強く言われたことがある。 …
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<第11回>Jヴィレッジに選手団を誘致できるのか
原発事故が起こってから2年6カ月後の13年9月。「復興五輪」を掲げた安倍首相はIОC総会で「(放射能汚染水の)状況はコントロールし、ブロックされている」と大見えを切り、20年東京オリンピック・パラリ…
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<第10回>町は“姥捨て山”になるという住民の悲痛な声
帰郷するたびに、南相馬市を流れる新田川の川辺に行き、サケの腹からこぼれたイクラを拾って食べていた少年時代を思い出す。毎年2月末に稚魚が放流され、4年後の秋に立派なサケとなって遡上する。回遊魚のためか…
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<第9回>避難生活する住民の目と鼻の先に汚染土の仮置き場
原発禍の町を行くと、汚染土が詰まった黒いフレコンバッグがあちこちの仮置き場に山積みされている。不気味な光景だ――。 原発事故から1年半後の12年夏。ようやく南相馬市は空間線量率の高い区域から…
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<第8回>国が線引きした僅かな差で慰謝料をもらえぬ理不尽
今月11日、3.11の震災から丸4年を迎えた午前中、私は車で南相馬市内を走り回った。 この日は天気に恵まれ、住宅地を走ると洗濯物や布団を干す主婦、日なたぼっこする高齢者の顔も穏やかだ。公園の…
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<第7回>運動不足とストレスで肥満傾向は全国1位
1月末、文科省は学校保健統計調査による5歳から17歳までの発育状態を発表した。それによると、12年以降は被災地で「運動不足や生活習慣の変化の影響が続く」とし、多くの年齢で、福島県の肥満傾向が全国1位…
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<第6回>新設「ふたば未来学園」を見る住民の目
2016年度をもって原発禍にある福島県双葉郡の浪江高、双葉高、双葉翔陽高、富岡高は休校となる。そのため、今春の入試は実施されず、4校に代わって4月から県立「ふたば未来学園」が開校。いずれは中高一貫に…
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<第5回>チームメートが津波で…練習に行けなくなった小学生
私は3.11後、「原発禍のスポーツ」をテーマに取材を行い、高校野球や少年野球の選手、父母、監督・コーチといった関係者から生の声を聞いた。 折しも、明日21日、選抜高校野球大会が開幕するが、原…
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<第4回>「双葉のことを書いてくれ」というお年寄りの叫び
原発事故関連で、12万人もの長期避難が続く福島では、関連死が4年間で1600人を突破、地震や津波の直接死を上回った。仮設住宅住まいの高齢者の孤独死や自殺も多い。私の高校時代の恩師で、在学中は酒、たば…
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<第3回>イレズミをした作業員に因縁つけられた親子3人
「南相馬は塀のないアウシュビッツみたいだ」 原発禍の南相馬市の現状を、知人は強制収容所にたとえた。放射線を恐れ、復興作業員の言動にも怯えている市民の姿を見ていると、そんなふうに思ってしまうのだ…
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<第2回>「被曝キャンペーンか」の声も上がる高速道路に線量計
今月1日、原発事故で整備が遅れていた、常磐自動車道の常磐富岡―浪江間が開通。ようやく首都圏と東北を結ぶ太平洋沿岸ルートが完成した。 ただ、喜んではいられない。富岡町と南相馬市の約30キロ間に…
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<第1回>代行バスの放射線量は基準値の38倍
福島県の太平洋に面した通称・相双地区を代表する人口7万余人(11年3月)の南相馬市。福島第1原発から北へ約37キロ以内に位置し「3.11」の際は桜井勝延市長が自ら被災した惨状をYou Tubeなどで…