五木寛之 流されゆく日々
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連載10100回 アメリカ・アズNo1 <2>
(昨日のつづき) アメリカの栄光はB29でもなければ、宇宙ロケットでもない。『サマー・タイム』や『ラプソディー・イン・ブルー』あればこそである。それは移民の子、ガーシュインの創りだしたアメリカの文…
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連載10099回 アメリカ・アズ・No1 <1>
アメリカは戦後少年である私たちにとって、はるかな憧れの国だった。 それはモノの王国、技術の帝国としてのアメリカではない。野球に代表される巨大なスポーツビジネスの世界でもない。 カルチュアとし…
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連載10098回 太るべきか痩せるか <5>
(昨日のつづき) 「体重、いかがですか」 と、このところ出会う人ごとにきかれる。 さては日刊ゲンダイを読んでるな、と内心思いつつ、 「いや、おかげさまで何とか予定どおりに収まってるけど」 …
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連載10097回 太るべきか痩せるか <4>
(昨日のつづき) 体重の増減というのは微妙なものである。 朝と夕方ではちがう。夜中に計ってみるとまたちがう。 食事の前と後では、これはちがって当然だろう。150グラムの肉を食べれば、それだ…
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連載10096回 太るべきか痩せるか <3>
(昨日のつづき) 痩せるためにはどうするか、という話ばかりが氾濫している当節だ。要するにダイエットである。メタボはいけない、これをどう克服するか、というような記事がやたら目につく。 しかし、世…
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連載10095回 太るべきか痩せるか <2>
(昨日のつづき) 「さぞ健康に気を使ってらっしゃるのでしょうね」 と、よくきかれる。 「そのお年で、連載を何本も抱えておられるわけですから」 そう言われても、実際にこれという健康法を実践し…
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連載10094回 太るべきか痩せるか <1>
健康は命より大事、といわれる昨今だ。ことに今後、きびしい老後が待ち受けているだろう高齢者は、健康だけが頼りである。 なにしろ648万人といわれる団塊の世代が、一斉に高齢化するのだからたまらない。…
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連載10093回 アニメ時代の人間感覚 <5>
(昨日のつづき) 文明が発達するにつれて、私たちの生活は間接的になっていく。人と人とのあいだに機械が介在することで、直接の人間関係が少くなっていくからだ。 それは便利ということの裏返しでもある…
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連載10092回 アニメ時代の人間感覚 <4>
(昨日のつづき) 考えてみると私自身の生活も、いつのまにか間接的、機械的になってきている。手書きで原稿を書いているとはいえ、万年筆のインクはカートリッジ式だ。 むかしはインク瓶から吸いあげて、…
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連載10091回 アニメ時代の人間感覚 <3>
(昨日のつづき) 私が子供のころ、というのは昭和10年代の前半にあたる。当時もマンガは人気があった。私の記憶では、『のらくろ』や『タンクタンクロー』、『冒険ダン吉』などが印象に残っている。 戦…
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連載10090回 アニメ時代の人間感覚 <2>
(昨日のつづき) この日刊ゲンダイのコラムの原稿は、400字詰めの原稿用紙に手で書いている。筆記用具は、パイロットの1万円の普及品だ。 手書きの上に、字が汚い。ゆっくりと丁寧に書けば問題はない…
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連載10089回 アニメ時代の人間感覚 <1>
昨年から今年にかけて、画期的な大ヒットとなったのは、映画『君の名は。』と『シン・ゴジラ』だった。その後『この世界の片隅に』も大きな話題を集めた。『世界の片隅――』では、本篇が終ったあと、延々と無数の…
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連載10088回 見えない時代の真実 <5>
(昨日のつづき) 一日に一度は書店をのぞく。これはもう習性のようなもので、食事をするのと同じような生活習慣だ。 このところ書店の棚には、トランプ関係の本が山積みされている。クリントンの関連書も…
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連載10087回 見えない時代の真実 <4>
(昨日のつづき) このところ一日一食の生活が続いている。べつに努力してそうしているわけではない。世間にはメタボ体質を心配して、減量のために食事制限をしている人もいるが、私の場合にはそうではない。 …
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連載10086回 見えない時代の現実 <3>
(昨日のつづき) かつてこの国は鎖国ということをした。だが実際には、さまざまな抜け道のあったことが、最近の研究では明きらかにされている。 そしていま、私たちはグローバル化の波の中で翻弄されてい…
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連載10085回 見えない時代の現実 <2>
(昨日のつづき) 例の無人攻撃機、ドローンが気になってしかたがない。先日のニュースでは、米軍だけでなく、CIAもドローンを使っているらしい。暗殺というとおどろおどろしいが、消去といえばなんとなく軽…
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連載10084回 見えない時代の現実 <1>
この何十年か、私が歩きまわる街の一角になんとなく気になる変化がおきてきた。 以前はあちこちに顔なじみのホームレスの人たちがいたのである。公園のベンチに、歩道橋の下に、ビルの入口の階段に、何人もの…
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連載10083回 陰謀論というけれど <4>
(昨日のつづき) 歴史は経済で動いている、という見方がある。また最近では、宗教が歴史の流れを作る、という説もある。 それらの立場は、いずれも理論的だ。しかし、人間の世界は、はたして理論どおりに…
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連載10082回 陰謀論というけれど <3>
(昨日のつづき) 第1次世界大戦に日本が参戦したのは、1914年8月である。大正3年のことだ。参戦といっても、青島を占領したことと、ドイツ領南洋諸島を支配したぐらいで、大した参加ではない。しかし、…
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連載10081回 陰謀論というけれど <2>
(昨日のつづき) 「要するに陰謀論にすぎない」 とか、 「そいつは陰謀論みたいなもんだな」 とか、 「一種の陰謀論である」 とか、そういう言い方をよく耳にする。要するに裏づけのない空…