五木寛之 流されゆく日々
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連載10080回 「陰謀論とはいうけれど」 <1>
妙に着物姿の若い娘たちが多いと思ったら、どうやら今日は「成人の日」であるらしい。あい変らず白いショール? を肩にかけた姿は、なんとなく時代とズレた感じがする。 成人ということは、一体どういうメリ…
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連載10079回 明日は誰にも判らない <3>
(昨日のつづき) 人はだれでも「気持ちのいい話」をききたがるものである。 しかし「気持ちのいい話」というのは、どこかで事実が編集されているものだ。高級な寿司屋でいろんな材料を惜しげもなく切って…
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連載10078回 明日は誰にも判らない <2>
(昨日のつづき) 「気持ちのいい話」「心が洗われるような話」というものがある。いわゆる美談というやつだ。美談というと、どこか道徳的、修身的な感じがする。そうでなくて、人間っていいな、とか、日本人も大…
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連載10077回 明日は誰にも判らない <1>
正月3日間は、ベッドの中で過ごした。枕元に山ほど本を積んで、一冊ずつその山を崩して日を送った。まさに寝正月である。 集中的に読んだのは、「シベリア出兵」に関しての資料が中心だった。 「シベリア…
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連載10076回 今年嬉しかったこと <3>
(昨日のつづき) きょうはインターヴュー、3つ。 取材の場所にのぞむ前は、できるだけ言葉ずくなに、慎重に答えようと心に誓う。 ところが、インターヴューが始まると、いつのまにか本音を勝手にし…
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連載10075回 今年嬉しかったこと <2>
(昨日のつづき) 困ったことは沢山ある。それに大変だったことも結構あった一年だった。しかし、嬉しかったことを探すとなると、これがなかなかむずかしい。 前回、4つまでは挙げることができた。さて、…
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連載10074回 今年嬉しかったこと <1>
(昨日のつづき) 今年は大変な一年だった。 世界も、そして私自身にとってもである。 とはいえ、これまで大変でなかった年などあっただろうか。 生まれて八十余年、世界も、この国も、私自身も…
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連載10073回 師走の街に風が吹く <4>
(昨日のつづき) 外交面でも、内政面でも、どうもパッとしない今年の暮れだが、嬉しいニュースが一つ。 先日来、さんざん苦労して編集部が作成していた『流されゆく日々』の〈1万回記念全タイトル一覧リ…
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連載10072回 師走の街に風が吹く <3>
(昨日のつづき) いよいよ今年もおわりに近づいた。 ストックなしの当日本番というスタイルで、よくもこれまで無事故でこられたものである。 夏の終りに1万回に達したとき、一応、この辺で打ち止め…
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連載10071回 師走の街に風が吹く <2>
(昨日のつづき) 景気がいいのか、悪いのか。 勤労者の実質賃金は、低下し続けているという。世帯当りの貯金を、とり崩して暮らしていると統計には出ている。 しかし、街の眺めはミニバブルだ。 …
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連載10070回 師走の街に風が吹く <1>
先週あたりから街の気配が妙にざわついている。師走とは、よく言ったものだ。横断歩道を渡る人の波も、心なしか前のめりになっている感じ。 「忘年会のピークは、先週末あたりでしたね」 と、タクシーのド…
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連載10069回 今週読んだ本の中から <10>
(昨日のつづき) 今週も終りである。読んだ本の中から、アトランダムに書名をあげておくことにしよう。どれも印象に残った本ばかりだ。活字を読むということは、本当におもしろい。このことだけでも、人生の目…
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連載10068回 今週読んだ本の中から <9>
(昨日のつづき) フォーク・クルセダーズの結成から、メディアへのデビュー、そして解散と再びの出会いなど、一つの戦後史としても貴重な資料が、『コブのない駱駝』の一冊にはぎっしりつまっていて、巻をおく…
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連載10067回 今週読んだ本の中から <8>
(昨日のつづき) 『コブのない駱駝』(岩波書店)は、〈きたやまおさむ「心」の軌跡〉という副題がそえられている。「序」に当る部分には〈北山修による、きたやまおさむの「心」の分析〉というサブタイトルもあ…
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連載10066回 今週読んだ本の中から <7>
(昨日のつづき) もう何十年も前の話である。 『平凡パンチ』という週刊誌が一世を風靡した時代があった。大橋さんの表紙が、その時代を活写している。いま眺めても恰好いい雑誌だったと、あらためて思う。…
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連載10065回 今週読んだ本の中から <6>
(前回のつづき) 先週、書き残した分の続きである。本来なら『先週読んだ本の中から』とするのが正確かもしれない。その辺を適当に、というか、自由気ままにやってきたからこそ40年以上もこのコラムが続いて…
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連載10064回 今週読んだ本の中から <5>
(昨日のつづき) 朴裕河氏の『引揚げ文学論序説』は、あくまで「序説」という形であるが、かなり主題に踏み込んだ本格的な著作である。 これまでも尾崎秀樹や川村湊など、引揚文学者への視線を向けた論者…
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連載10063回 今週読んだ本の中から <4>
(昨日のつづき) トスカーのことを書いていたら、長くなってしまった。今週、読んだ本の中から3冊をとりあげてみようと思っていたのだが、来週まで同じタイトルで続けることにしよう。 朴裕河著『引揚げ…
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連載10062回 今週読んだ本の中から <3>
(昨日のつづき) 「暗愁」という言葉は、奈良、平安の時代に中国から渡来したものだろう。 さまざまな文物が大陸から伝わってくる中に、多くの言葉があった。「暗愁」も、その中にまぎれこんでいた外国渡来…
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連載10061回 今週読んだ本の中から <2>
(昨日のつづき) 今はミソクソに言われるM・ゴーリキーだが、スターリンとゴーリキーを一緒にしたくはない。 初期の短篇や自伝的な小説、また晩年のフェイエトン『回想』などは、忘れることのできない作…