五木寛之 流されゆく日々
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連載10120回 最近見なくなった光景 <2>
(昨日のつづき) そういえば近頃まったく見なくなったのが、女性の立ちションである。 昔は、などといっても江戸時代ではない。戦後しばらくたってからも、田舎では女性の立ちションはめずらしくなかった…
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連載10119回 最近見なくなった光景 <1>
平成も29年ともなれば、昭和という時代がはるか遠いもののように思われてくる。 昭和歌謡などもそうだ。きっと今の若い人たちには、小唄、端唄か、都都逸のように感じられるのだろう。いや、都都逸などとい…
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連載10118回 アラハン世代の逆襲 <5>
(昨日のつづき) アラハン。声にだして言ってみると、なんとも索然たる音の響きである。 長寿とか、長生きとか、そんな語感ではない。未知の荒涼たる荒野を前にしている旅人の感じなのだ。 月へ行く…
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連載10117回 アラハン世代の逆襲 <4>
(昨日のつづき) 祖父の年金を当てにしてやってくる孫が、おじいちゃんをハサミで刺し殺したという。 なんということだろう。最近よく聞くのは、「なんとかうちのオジイちゃんに長生きしてもらわなきゃ」…
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連載10116回 アラハン世代の逆襲 <3>
(昨日のつづき) アラハン(アラウンド・ハンドレッド)世代に逆襲は可能か。 これまでの90歳代のイメージは、寝たきりの植物人間だった。まれに元気なアラハンがいると、テレビなどで珍獣あつかいされ…
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連載10115回 アラハン世代の逆襲 <2>
(昨日のつづき) 以前、刺戟的なマンガを見たことがあった。政府が「老人駆除隊」なる秘密組織をつくって、高齢者を抹殺していく話である。 その極秘工作に対して、老人側に男性ジャンヌ・ダルクのような…
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連載10114回 アラハン世代の逆襲 <1>
アラサーという言葉が流行ったことがあった。アラウンド・サーティーの意味らしい。30歳前後の、おもに女性が対象とされていたようだ。 全体的に結婚する年齢がおくれるのは先進国の特徴である。かつては1…
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連載10113回 話を盛るということ <5>
(昨日のつづき) このところシベリア出兵に関する本を、かなり読んでおもしろかった。 シベリア出兵、またシベリア派兵とも言う。これは一体なんなのか。一時は七万数千の兵を送りこんで、ザバイカルのあ…
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連載10112回 話を盛るということ <4>
(昨日のつづき) 人間の記憶力が曖昧であることは、自分に即して考えてみれば、すぐにわかることだ。 つい昨日のことでも、失念する場合が少くない。いや、昨日どころか、その日の出来事でも、すっかり記…
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連載10111回 話を盛るということ <3>
(昨日のつづき) これまで随分たくさんの人と対談をしてきた。500人?いや1000人かもしれない。数えたことがないから、はっきりしないのだ。 ひと月に、仮りに3人平均で対談したとする。1年でお…
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連載10110回 話を盛るということ <2>
(昨日のつづき) 九州人の特徴は、楽しくやろう、という気持ちがつよいことである。 もちろん、人によって性格はちがう。県民性などというのは当てにならないが、それでも地方によって人の気質には相違が…
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連載10109回 話を盛るということ <1>
むかし使わなかった言葉が、最近はやたらと出てくる。 作家に対する呼び方も、以前は「書き手」とか、目上のベテランには「センセイ」とかいうのが普通だった。「作家」「小説家」というのが、ごく一般的な呼…
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連載10108回 風に吹かれてユラリ <5>
(昨日のつづき) どうも世の中が逆回転しつつあるような気がしてならない。 中世、近世、近代、現代、といった時代の区分が、ゴッチャになっている。歴史は整然と進行するものではないらしい。 今世…
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連載10107回 風に吹かれてユラリ <4>
(昨日のつづき) 昨日の日刊ゲンダイの記事に注目した。 全国で変形性膝関節症の患者は、2500万人にのぼるという話である。 2500万人というのは、治療を受けた延人数だと思われるが、それに…
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連載10106回 風に吹かれてユラリ <3>
(昨日のつづき) このところ高齢者の運転事故が、やたらと多い。そう感じるのは、報道が無意識に高齢者の車の運転を抑制しようとしているからではないかと思う。80歳以上のドライバーに対して、社会全体のプ…
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連載10105回 風に吹かれてユラリ <2>
(昨日のつづき) 街を歩いていて、フラリ、フラリと左右に体が揺れる人を見かける。たしかめるとほとんどが高齢者だ。 酒に酔っているわけでもないのに、千鳥足なのはなぜだろう。 最近、読んだ本に…
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連載10104回 風に吹かれてユラリ <1>
年をとると話が限られてくる。老人同志だとすぐに病気の話になりがちだ。 トランプがどうとか言ったところで、しょせんのちの世の話じゃないか。オレたちには、この1、2年しかないんだよ、といった明るいニ…
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連載10103回 アメリカ・アズ・No1 <5>
(昨日のつづき) 最近、人口論が話題になっているが、日本の人口についても意外に思うことが少くない。 たとえば、縄文晩期(紀元前2900年)あたりのこの列島の人口が、7万6000人と聞けば誰でも…
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連載10102回 アメリカ・アズ・No1 <4>
(昨日のつづき) フランスで国民戦線の動きが注目されている。まさか、とは思うがルペンがフランスのリーダーになる可能性はゼロではない。いま世界は常識を引っくり返す出来事の連続だ。 このコラムで何…
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連載10101回 アメリカ・アズ・No1 <3>
(昨日のつづき) カシアス・クレイは、のちにモハメッド・アリと改名した。自分がアフリカから強制連行されてきた奴隷の末裔であると自覚して、あたえられた名前を捨て、そのルーツに関係のある名前を選び取っ…