映画「女が眠る時」で西島秀俊と忽那汐里が見せた新境地
【大高宏雄「エンタメ最前線」】
職業柄、俳優の動向には絶えず注視しているが、特に伸び盛りの俳優は新作を見るたびに、新たな発見がある。今日27日公開の「女が眠る時」に2人の俳優の新境地が見られた。
ひとりが主演の西島秀俊である。スランプ気味の作家の役で、滞在先の伊豆のホテルで知り合った初老の男(ビートたけし)に異様なほど引きつけられる。男が若い女性と一緒にいたからである。
2人の関係を知るうち、男が見せる女への愛の強烈さに動揺する。それで自身の気まずい夫婦生活があぶり出されてくる。しかも、2人の関係は創作にも刺激を与え始めた。
西島の暗い風貌から悩みに悩む姿が、次第に色濃くなっていく。彼は実にまっとうな精神の持ち主であるのだが、内面には暗い闇を抱える。初老の男と出会うことで、それが一気に彼の表面に刻まれていくのだ。
抱え込んだ人間の闇が他者によってあぶり出される。静かだが、沸々と湧き上がるかのような彼の困惑、動揺ぶりが演技の中で的確に表現されていて、目を見張ったのである。