東京オリ・パラの赤字は総額2兆4000億円!政府・都・組織委の「不都合な真実」いよいよ明るみに

公開日: 更新日:

 東京五輪・パラリンピックによって、我々は巨額の赤字を尻拭いさせられるかもしれない。

 先日、関大名誉教授の宮本勝浩氏が、東京五輪・パラリンピックの経済効果と赤字額を算出。経済効果は約6兆1442億円としたが、経済効果はあくまで効果であって収入ではない。一方で、東京オリ・パラ開催における支出と収入を計算した結果、組織委および、東京都、国の赤字の総額は約2兆3713億円になった。宮本氏は「本報告書は、東京オリ・パラ開催に賛成とか反対とかの感情的な立場にたって分析したものではなく、責任のある機関が公に発表した金額、数値に基づいて客観的に計算したもの」としている。

【写真】この記事の関連写真を見る(22枚)

■東京都と国の収入はスズメの涙

 今回の赤字額の試算において重要なポイントは、経費のマイナスだけでなく、歳出増加による税収や経済効果を計算し、それに基づく消費や税収の増加分も考慮して分析されていることだ。今後、組織委は東京オリ・パラの収支報告を出すことになろうが、宮本氏は「最終決算」を見据えて、赤字額を算出している。

 宮本氏の分析によると、それぞれの赤字額は、

①組織委 約900億円
②東京都 約1兆4077億円
③国 約8736億円


 となり、総額で約2兆3713億円

 ①の組織委は、一部地域を除いて無観客開催となったことで、チケット収入の大部分が消滅した。

 ②の東京都については、2020年12月に組織委が発表した「予算第5版」によると、大会経費が7020億円。さらに都は18年1月に都市のインフラ整備やボランティアの養成などで20年までに「大会関連経費」として約8100億円計上しており、支出総額を約1兆5120億円とした。

 一方で収入は、18年の都の税収を基に、五輪開催に伴う法人税、個人税、繰入地方消費税の増額分を算出した結果、約1043億円となった。

 ③の国も、組織委発表の大会経費2210億円に加え、19年12月の会計検査院報告によると、12~18年の間に、約1兆600億円の五輪関係経費が使われていることを発表しており、支出は少なくとも1兆2810億円に上るとした。

 収入は、18年度の歳入決算を基に法人税、所得税、消費税の増加分を推計した結果、約4074億円となった。

 建設業界など、五輪開催によって潤った企業もあるものの、都や国が得られる「利益」は支出額に遠く及ばない。

後始末を都民、国民に背負わせるつもりでは

 今回の試算について宮本氏は、「経済的側面から赤字額を推計したものであり、東京オリ・パラの開催による『新型コロナ』の感染者や亡くなった人が増加したことなどによるマイナスの効果や医療関係者の負担増加などのマイナス面は推計していない」としている。

 加えて現時点では組織委や都、国が発表していない五輪開催に伴うコロナ対策費や、会計検査院がまだ報告していない19年以降の国による五輪関係経費もこの試算には含まれていない。支出がさらに増えることは確実で、さらに赤字額が膨らむ可能性は十分にある。

 試算を発表した宮本氏が言う。

「都や国の収入は税収しかありませんが、五輪開催に伴う増額分は非常に少ないものです。政府や自治体の仕事は一般企業とは違い、税金が原資。何かのイベントを行うにしても見返りは少ないし、そもそも利益うんぬんを目的に行うものではない。税金を投入した結果、国民が満足感を得られるか、ということになってくると思います。とはいえ、今回の東京オリ・パラに関しては、かなりの歳出超過になっていると言わざるを得ません」

 しかも、都や国は、五輪開催前の時点で国立競技場の建設費(1569億円)や、今後のレガシー効果を前提にして投資されたインフラ整備費などで、1兆7966億円もつぎ込んでいる。

「今回の東京オリ・パラが仮に中止になっていても、警備費などがカットできるくらいで、支出額はほとんど変わらないと考えられます。設備投資などで、五輪を開催するための準備を何年も前から進めてきたからです。いずれにしても大きな赤字になることは避けられなかったわけです」(宮本氏)

 東京五輪の予算は、コロナ禍による1年延期も重なり、当初の想定からどんどん膨らんだ。ある研究機関の調査によると、1960年以降の五輪はすべて赤字で、平均172%もの予算超過になっているという。

 国士舘大学非常勤講師でスポーツライターの津田俊樹氏は以前、日刊ゲンダイでこう言っている。

「都や政府はお祭り騒ぎの後始末を、都民、国民に背負わせるつもりではないか。政府は折からのコロナ禍による損失と五輪による損失をごちゃ混ぜにして、東日本大震災の復興増税のように、所得税の増税を強行しても不思議ではない」

 図らずも、日本のコロナ感染者数は、海外から数万人の選手、関係者が来日した五輪開幕前後から増加の一途をたどった。巨額の税金を投じてまで五輪をやる価値があったのか。五輪の意義が問われるのはもちろんとして、コロナ禍で強行開催した結果、日本が得たのは巨額の負債とコロナの感染爆発というなら、都民、国民はとんでもなく高いツケを払わされることになる。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    「悠仁さまに一人暮らしはさせられない」京大進学が消滅しかけた裏に皇宮警察のスキャンダル

    「悠仁さまに一人暮らしはさせられない」京大進学が消滅しかけた裏に皇宮警察のスキャンダル

  2. 2
    香川照之「團子が後継者」を阻む猿之助“復帰計画” 主導権争いに故・藤間紫さん長男が登場のワケ

    香川照之「團子が後継者」を阻む猿之助“復帰計画” 主導権争いに故・藤間紫さん長男が登場のワケ

  3. 3
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 4
    巨人・菅野智之の忸怩たる思いは晴れぬまま…復活した先にある「2年後の野望」 

    巨人・菅野智之の忸怩たる思いは晴れぬまま…復活した先にある「2年後の野望」 

  5. 5
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  1. 6
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  2. 7
    「つばさの党」ガサ入れでフル装備出動も…弱々しく見えた機動隊員の実情

    「つばさの党」ガサ入れでフル装備出動も…弱々しく見えた機動隊員の実情

  3. 8
    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白

  4. 9
    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

  5. 10
    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?

    悠仁さまが10年以上かけた秀作「トンボの論文」で東大入試に挑むのがナゼ不公平と言われるのか?