五木寛之 流されゆく日々
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連載12070回 スポーツと私 <4>
(昨日のつづき) このところメジャーリーグの来日と、大谷選手の活躍で、野球界はお祭り騒ぎだ。これだけ期待されて、その期待に答える活躍ぶりをみせる大谷選手は凄い。本人の才能プラス何かが憑依していると…
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連載12069回 スポーツと私 <3>
(昨日のつづき) 中学生の頃は卓球をよくやった。もちろん部活とか、そんな本格的なものではない。近くの公民館に出かけては、その辺のヒマ人を相手にラケットを振り回す程度の遊びである。 高校にはいる…
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連載12068回 スポーツと私 <2>
(昨日のつづき) 少年の頃、といっても戦時中の話だが、いちばんやったのは剣道だった。父親が有段者で武徳会の役員などもつとめていた男だったから、冬でも毎朝、叩きおこされて木刀の素振りなどをやらされた…
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連載12067回 スポーツと私 <1>
私はスポーツが好きだ。 だが、スポーツマンではない。体格も貧弱だし、運動神経も普通以下だろう。 それでも何か運動をすることが好きだし、またスポーツを観ることも好きだ。テレビ中継でプロ野球、そ…
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連載12066回 健康ブームの背景 <3>
(昨日のつづき) 言うはやすく、行うは難し。 病気になって対処法を語るよりも、病気にならない未病のコツを知りたい、というのが一般読者の正直な感想ではあるまいか。 前にも書いたが、壮絶な闘病…
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連載12065回 健康ブームの背景 <2>
(昨日のつづき) 世間には<健康法>と<養生>という2つの発想がある。 どちらも予防と治療に関する自主的な対策だ。しかし、中身は同じでも、どこかがちがう。 なんとなく片方が東洋的で、もう一…
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連載12064回 健康ブームの背景 <1>
それをしてジャーナリズムと呼ぶのかどうかはわからない。 朝、新聞を読む。午後に週刊誌を読む。夜、夕刊と月刊誌を読む。 それら活字メディアにラジオとテレビがくわわって、マスコミと呼ばれるのだろ…
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連載12063回 「未完の仏」とは何か ─平岡正明をふり返る─ <2>
(昨日のつづき) <山口百恵は菩薩である> というのは、一世を風靡した平岡正明のコピーである。 幾千幾万の戦後のコピーのなかでも、ベストスリーにはいる傑作だろう。私は彼の著作集のオビを書くに…
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連載12062回 「未完の仏」とは何か ─平岡正明をふり返る─ <1>
ちくま文庫から出ている平岡正明の『ジャズ喫茶伝説』(筑摩書房刊)を読みだしたら、とまらなくなって、仕事を放りだして読んでしまった。 ジャズ喫茶についての本は、ずいぶんある。それぞれの体験談や、時…
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連載12061回 「霧のカレリア」再読 <5>
(昨日のつづき) 今回、半世紀以上も昔の、デビュー当時の作品を読み返したのは、かつての思い出にひたるためではない。 このところずっと取り組んでいた『五木寛之セレクション』(全7巻)の編集のため…
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連載12060回 「霧のカレリア」再読 <4>
(昨日のつづき) 20世紀初頭のフィンランドと現代のウクライナを簡単に重ね合わせることはできない。 それを承知で、大国に隣接する小国家の運命を思い描くことは、必ずしもナンセンスとは言えないので…
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連載12059回 「霧のカレリア」再読 <3>
(昨日のつづき) フィンランド共和国(スオミ)は、人口、5、600万人ほどの北欧の小国だ。 大国ロシア、スウェーデンなどに国境を接しているために、さまざまな苦難の歴史をたどってきた。 スウ…
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連載12058回 「霧のカレリア」再読 <2>
(昨日のつづき) 私がはじめてフィンランドを訪れたのは、1965年の初夏だった。 シベリア経由で当時のソ連に入り、モスクワ、レニングラードから列車で北欧へむかった。私が30代半ばの頃である。 …
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連載12057回 「霧のカレリア」再読 <1>
メディアの情報には波がある。 <一犬ナントカで万犬吠ゆ> とか、そんな文句があったが、そういう感じ。 <ワレ独り孤道ヲ往ク> という具合いにはいかないのが、マスコミというものだ。 こ…
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連載12056回 新聞・雑誌拾い読み <4>
(昨日のつづき) 今朝の新聞にのっている週刊誌の広告を見ると、健康・病気に関する記事が、どの雑誌も柱になっている。 <週刊新潮>も、<週刊文春>も、<女性セブン>もそうだ。<週刊ポスト>も<週刊…
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連載12055回 新聞・雑誌拾い読み <3>
(昨日のつづき) いつからか新聞を下から読むような癖がついてしまった。 まず1面、最下段の本の広告を見る。その日によって6社とか8社のカラー広告が並んでいるのだが、これがなかなか秀逸なのだ。コ…
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連載12054回 新聞・雑誌拾い読み <2>
(昨日のつづき) 最近の週刊誌、新聞などには、カラスの鳴かぬ日はあっても、健康に関する記事がのらない日はない。 今週の週刊文春も、週刊新潮も、それぞれ健康についてのかなり力の入った記事を組んで…
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連載12053回 新聞・雑誌拾い読み <1>
今朝の新聞を眺めていて、びっくりした。 短いニュースだが、目下、ウクライナでプーシキンの像が撤去されつつあるという。 たしかにプーシキンはロシアの国民的詩人である。さらに、ドストエフスキーや…
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連載12052回 なくて七癖とは <5>
(昨日のつづき) 北のほうは大雪らしいが、東京、横浜は降らない。 むかしは関東も結構ふったようだ。『忠臣蔵』の討ち入りの日も、雪が背景になっている。 雪は降らないが、寒さはかなり厳しい。そ…
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連載12051回 なくて七癖とは <4>
(昨日のつづき) <衣食住>などという。 この言葉は私たち人間の存在様式の、根元をあらわす表現のように使われる。 しかし、私はなんとなく疑問があるのだ。 なぜ<衣>がトップにくるのだろう…