五木寛之 流されゆく日々
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連載10788回 回想の森をめぐって <3>
(昨日のつづき) 未来は回想によって予見される。過去をふり返らない者に明日はない。 しかし、人は成長期には背後を見ようとはしないものだ。一直線に未来への夢を追い続ける。例外はあっても、それが普…
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連載10787回 回想の森をめぐって <2>
(昨日のつづき) 最近よく聞く言葉にフレイルというのがある。高齢者の筋力や体力が落ちて、日常生活に支障をきたすほどに衰えが出てくることをいうらしい。 体力の衰えは自然の理である。しかし、少しで…
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連載10786回 回想の森をめぐって <1>
最近、物忘れがひどくなってきた。ことに人の名前がなかなか思い出せない。先日も会話のなかで、アンジェイ・ワイダ監督の名前が出てこなくて苦労した。相手のジャーナリストが得意気に、 「アンジェイ・ワイダ…
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連載10785回 夜ごとに変る波枕 <5>
(昨日のつづき) これまでにも繰り返し書いてきたことだが、「面授」という言葉がある。仏教の世界などでよく使われてきた単語だ。 「面授」とは、文字通り対面して教えを受けること。肉声で、表情や身ぶり…
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連載10784回 夜ごとに変る波枕 <4>
(昨日のつづき) 対談というからには、どこかに対立も必要である。最初から最後まで和気藹藹というわけにはいかない。 とはいうものの、いきなり相手の意見に反論して、双方が不愉快になるのも困る。その…
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連載10783回 夜ごとに変る波枕 <3>
(昨日のつづき) 対談というのは、まとめが命だ。どんなにその場で活気のある対談であっても、活字にまとめた時点で駄目になってしまう事もある。 向かいあって話をしているとき、こちらが言葉を発しなく…
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連載10782回 夜ごとに変る波枕 <2>
(昨日のつづき) 先週は立て続けに3つの対談をした。又吉直樹さん、塩野七生さん、そして昨日の文章で触れた中西進先生である。 昔は年長者と対談をすることが多かったが、80歳を過ぎてからはほとんど…
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連載10781回 夜ごとに変る波枕 <1>
昨日、中西進先生と対談をさせて頂いた。いまや時の人どころではない、国民的注目の的となった万葉学者である。 私はこれまで大先輩作家に対しても先生と呼んだことはなかった。不遜といえば不遜かもしれない…
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連載10780回 金のかからぬ養生法 <5>
(昨日のつづき) 養生法と健康法はちがう、と最初に書いた。たとえばジムに行って体を鍛えるのは、健康法の一種である。肥満を解消し、筋肉をつけるメソッドだ。 それは人生の前半期の人々には大いに有効…
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連載10779回 金のかからぬ養生法 <4>
(昨日のつづき) 最近の健康情報の氾濫ぶりはすさまじいものがある。あらゆるメディアに健康に関する情報がとりあげられて、それがそれなりに大きな反響があるらしい。 健康本と称される出版物も次々に刊…
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連載10778回 金のかからぬ養生法 <3>
(昨日のつづき) 養生法と健康法はちがう。 健康法を説く人は、本人がまず健康でなくてはならない。病人が健康法を語ったとしても、誰も耳を傾けないだろう。 養生とは、弱い体をなんとか維持するた…
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連載10777回 金のかからぬ養生法 <2>
(昨日のつづき) 深い呼吸をすることが大事だ、とわかっていても、なかなか人は実行しないものだ。 努力をする、ということはむずかしい。世の中には努力家というタイプの人がいる。生まれつき努力が好き…
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連載10776回 金のかからぬ養生法 <1>
物心ついたときから、常識に逆らうようなことばかりやってきた。 小学生の頃、「心頭を滅却すれば火もまた涼し」という文句に出会った。なるほど、と思って、ローソクの灯に指をかざして火傷をしたことがある…
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連載10775回 秋の金沢日帰りの記 <5>
(昨日のつづき) 深夜、金沢駅で買ってきた鱒寿司を食べる。そもそも富山の名産なのに、金沢を訪れた観光客に大人気なのがこの鱒寿司だ。 昔に変らぬ味、というのが取り柄だろう。横川の釜飯弁当とこの鱒…
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連載10774回 秋の金沢日帰りの記 <4>
(昨日のつづき) 泉鏡花賞の授賞式での山田詠美さんのスピーチの続きである。 <不安に選ばれる優越感などというと、とても矛盾しているように思われるでしょうが、小説を書くというのは、常にその感…
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連載10773回 秋の金沢日帰りの記 <3>
(昨日のつづき) 泉鏡花賞の授賞式での山田詠美さんのスピーチの続きである。 〈そして、次第に不安自体がひとり歩きをして主人公を引っ張りコントロールするようになって行く。つまり、そうなると、今…
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連載10772回 秋の金沢日帰りの記 <2>
(昨日のつづき) 山田詠美さんは平成8年第24回の鏡花賞の受賞者である。今回の田中慎弥さんが47回の受賞だが、その時からすでに二十数年がたっているのだ。 その時の受賞作品が『アニマル・ロジック…
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連載10771回 秋の金沢日帰りの記 <1>
金沢へいってきた。日帰りトンボ返りの旅である。いや、こういうのは旅とは言えないだろう。まあ、移動という感じだろうか。 今回は例の鏡花賞の授賞式で、短い挨拶をするためにいったのだ。 泉鏡花賞も…
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連載10770回 人は自慢する動物である <4>
(昨日のつづき) 先月から今月にかけて、いくつもの対談をした。 佐高信さんとの対談のあとに、横田南嶺師との対談があった。 後で反省したのだが、やはりお二人との対談の中でも結構、私の発言には…
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連載10769回 人は自慢する動物である <3>
(昨日のつづき) 自慢、というのは一体なんだろう。なぜ人は自慢するのか。自慢するつもりがないのに、自分の事を語ると、いつしか自慢になってしまうのはなぜか。 いや、はたしてそれを自慢と言うべきな…