五木寛之 流されゆく日々
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連載10502回 ひさしぶりに柳川へ <3>
(昨日のつづき) 柳川といえば、筑後地方でもいささか格上というか、どことなく品の良さを感じるところがある。 「ナントカカントカして下さい」 という依頼の表現に、 「ナントカカントカしてはい…
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連載10501回 ひさしぶりに柳川へ <2>
(昨日のつづき) 翌日は午前10時に起きた。ふだんは午後3時とか4時に目覚めるのが常なので、睡眠不足で意識はモーローだ。 迎えの人に連れられて博多駅へ。新幹線で筑後船小屋まで、あっというまに着…
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連載10500回 ひさしぶりに柳川へ <1>
残暑と豪雨が交互にやってくる夏の終りだ。どうやらまた新しい台風がやってくるらしい。 もう何十年も前に大騒ぎされた地球温暖化と環境異変が、ようやく現実味をおびて立ち現れてきた。 たぶん、これか…
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連載10499回 口笛を吹きつつ夜を <4>
(昨日のつづき) きょうは、このタイトルとちょっと離れた話を書く。 古い蔵書を整理していたら『回廊での立ち話し』という対談集がでてきた。 1970年代末に実業之日本社から出した古い本である…
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連載10498回 口笛を吹きつつ夜を <3>
(昨日のつづき) ふり返ってみると、この半世紀以上いろんな雑文を書き殴ってきた。放言、独言も多い。そんな自分の仕事の足跡を、私はこれまでほとんど振返ってみたことがない。<その時 その場所で>という…
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連載10497回 口笛を吹きつつ夜を <2>
(昨日のつづき) 夜中に口笛を吹いてはいけない、とは、子供のころによく言われたことだった。 「なぜ?」 ときき返すと、いけないものはいけない、と怖い顔をしてにらまれた。 いけないと言われ…
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連載10496甲回 口笛を吹きつつ夜を <1>
かつて、と言っても1950年代、イギリスにAngry Young Menと呼ばれた作家たちが登場した。 コリン・ウィルソンやアラン・シリトーらの一群だが、ジョン・オズボーンの戯曲『怒りをこめてふ…
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連載10495回 痛みについて考える <5>
(昨日のつづき) 痛む脚を引きずりながら帝国ホテルへ。 きょうは集英社の『小説すばる新人賞』の選考会に出なければならない。 右手に提げた候補作の束が、やたらと重い。なにしろ500枚前後の作…
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連載10494回 痛みについて考える <4>
(昨日のつづき) 半場道子さんの『痛みのサイエンス』(新潮選書)の第一章は、痛みの歴史から始まる。 ギリシャ・ローマの話から『ガリヴァー旅行記』、そして『三国志演義』に見る痛みと、痛みの展望が…
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連載10493 痛みについて考える <3>
(昨日のつづき) 『慢性痛のサイエンス』(半場道子著)の序を読むと、ほう、と目のウロコが落ちるようなことが書いてある。 まず「慢性痛は急性痛が長引いたものではない」 私は急性痛が長引いたも…
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連載10492 痛みについて考える <2>
(昨日のつづき) 『痛みについて考える』というタイトルの連載をゲンダイ紙上で始めた初日、同じゲンダイの健康特集で『慢性疼痛』に関する記事が掲載されたのには驚いた。偶然の一致だが、それだけ「痛み」に…
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連載10491 痛みについて考える <1>
きょうも痛む脚を引きずりながら歩いている。 左脚のふくらはぎ、膝、太腿などが動かすと痛むのだ。片脚を引きずるようにして歩くようになってから、3年近くがたつ。 戦後70余年、一度も病院に行った…
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連載10490回 大変動の時が近づく <5>
(昨日のつづき) あんたが縁起でもない文章を書くからいけないんだよ、と見当ちがいの批判を受けた。 北海道はじめての震度7の地震である。 ニュース番組のドローンで撮影した山崩れの映像を見て、…
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連載10489回 大変動の時が近づく <4>
(昨日のつづき) 世の中が大変なことにならなくても、こちらの一身上に大変なことが起こるかもしれない。 「さくらももこさん、残念だったね」 「早過ぎる去り方ですよね。人はいつ何が起こるか、わから…
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連載10488回 大変動の時が近づく <3>
(昨日のつづき) 強力台風の来襲でマスコミは大騒ぎだ。テレビの張り切りようもすごい。 こうして眺めていると、ジャーナリズムとは、つくづく罪深い仕事だと思われてくる。 国民の不幸や人々の苦し…
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連載10487回 大変動の時が近づく <2>
(昨日のつづき) 新聞や雑誌、テレビなどで、現状の分析や将来の予測などが大きく扱われる。未来予測の新書なども良く売れているようだ。 これまで将来の予測といえば、かなり先の未来について語られるこ…
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連載10486回 大変動の時が近づく <1>
地球温暖化の問題が全世界を騒がせたのは、いつの頃のことだっただろうか。 なんとなくずいぶん昔だったような気がする。ひとしきり騒いで、それからいつのまにか忘れられたような感じになっていた。 し…
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連載10485回 新しい本が出ました <5>
(昨日のつづき) 「イツキさんが、新しい本が出ました、なんて言っても余りピンときませんね」 「なぜだい」 「2、3年に一冊、新刊を出す人ならともかく、イツキさんは2、3カ月に一冊ぐらいの割り合い…
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連載10484回 新しい本が出ました <4>
(昨日のつづき) このところ妙な天候が続いている。テレビをつけても、やたらと天気に関するニュースが多い。 地球環境の変化が騒がれたのは、どれくらい以前のことだったのだろう。なんとなく忘れられて…
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連載10483回 新しい本が出ました <3>
(昨日のつづき) 『哲学に何ができるか』(抄)の内容紹介の続きである。廣松渉さんとの対話を一冊にまとめたこの本は、目次だけ眺めるといかにも難しそうに見えないこともない。 第二章『同時代の哲学』で…