五木寛之 流されゆく日々
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連載11963回 「対談」はどこまで続く <2>
(昨日のつづき) 対談の基本的なルールの一つは、約束の時間におくれないことだ。 これまで半世紀以上にわたる対談のなかで、時間におくれて相手を待たせたことは、ほとんどないように思う。 いや、…
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連載11962回 「対談」はどこまで続く <1>
明日の午後は田原総一朗さんと対談の予定がはいっている。文春の仕事だ。 田原さんとは、若い頃に奇妙なご縁があって、なんとなく「仲間」という感じがつよい。いま産経新聞の朝刊に連載中の語りおろし的自伝…
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連載11961回 「老い てんでんこ」 <5>
(昨日のつづき) きょうは夕方から泉鏡花文学賞の選考会に出席。 新聞社も、出版社も、どこのサポートもなしで始めた地方の文学賞が、今年で52回目を迎えたのは、奇蹟のような出来事といっていいだろう…
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連載11960回 「老い てんでんこ」 <4>
(昨日のつづき) <てんでんこ>の<てんでん>は、各人が勝手に、という意味だろう。 <てんでんバラバラ>のてんでんだろう。有事のときには一致団結、というのが一般的な考え方だが、<てんでんこ>には、…
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連載11959回 「老い てんでんこ」 <3>
(昨日のつづき) 私のいう<前期高齢期>、すなわち50歳から70歳までの期間は、それぞれ勝手に生きればよい。 夏が過ぎたのだ、と過ぎ去りし季節をふり返って感傷にひたるもよし、もうひと花咲かせら…
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連載11958回 「老い てんでんこ」 <2>
(昨日のつづき) 高齢期を3つに分ける。 <前期高齢期> <中期高齢期> <後期高齢期> ひと言で高齢期といっても、じつはさまざまで、一様ではない。 人生百年と仮定して、その半分、5…
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連載11957回 「老い てんでんこ」 <1>
先日、昔の本を読んでいたら、へえ、と思うような事が書いてあった。 一般に「歳をとる」という。この年寄りの基準がいまとまったくちがうのだ。 「お年寄り」とか、「老人」とかいう表現を40代の人にむ…
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連載11956回 かくて今日も過ぎゆく <4>
(昨日のつづき) この数カ月、歯の問題で頭を悩ませている。 新しく義歯を作ったのだ。 義歯なんていうと、偉そうだが、要するに<入れ歯>のことである。 私は上の前歯の歯列に問題をかかえて…
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連載11955回 かくて今日も過ぎゆく <3>
(昨日のつづき) 誕生日が近づいてきた。 この年になって誕生日を気にするのはなんだが、本人はともかく、周囲が気にとめていてくれるのが気が重い。 「たしか、石原慎太郎さんと御一緒でしたよね」 …
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連載11954回 かくて今日も過ぎゆく <2>
(昨日のつづき) この半年あまり喉に腫れものができて、厄介なことになっていることは前に書いた。 単なる咽頭炎なのか、それとも上咽頭ガンのような悪性のものかはわからない。 おまけに最近、腫れ…
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連載11953回 かくて今日も過ぎゆく <1>
能登の豪雨被害の惨状を伝えるニュースのあとに、テレビは一転して大谷選手の快挙を報じている。パ・リーグはソフトバンクが制した。 視ているこちらは、感情の整理もつかないせまい世の中というものは──と…
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連載11952回 九十翁からの詫び状 <4>
(昨日のつづき) 先日の海老名市立中央図書館での講演について、前回、懺悔の文章を書いた。 すると、それと入れ違いに、主催者側からの<講演アンケート>という印刷物が自宅に送られてきた。 <まい…
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連載11951回 九十翁からの詫び状 <3>
(昨日のつづき) 午後4時半すぎに帝国ホテルのロビーに到着。 5時から『小説すばる新人賞』の選考会があるのだ。 このところ、いくつかの選考委員を退いたが、この新人賞だけは妙に愛着があって、…
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連載11950回 九十翁からの詫び状 <2>
(昨日のつづき) 60歳の壁、70歳の壁とかいっているが、その辺はまだ大したことはない。 80歳の壁をこえると、人間、すこし変った景色が見えてくる。 そして90歳をこえると、俄然、まわりの…
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連載11949回 九十翁からの詫び状 <1>
先週の金曜日、海老名市にいった。 中央図書館主催のトークイベントに呼ばれたのだ。 トークイベントといっても、要するにこぢんまりした講演会である。 平凡社から出したエッセイ集『新・地図のな…
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連載11948回 自分への暑中見舞 <5>
(昨日のつづき) きょうは文春本誌のための座談会。 『昭和万謡集』編纂作業の一環としての、意見交換の会である。 藤原正彦さん、片山杜秀さん、内館牧子さん、酒井順子さん、ジュディ・オングさん、…
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連載11947回 自分への暑中見舞 <4>
(昨日のつづき) 今週の『サンデー毎日』がおもしろい。 自分がささやかな連載をやっている雑誌をほめるのはナンだが、読むところがいくつもあった。 最近の週刊誌は、どうも羊頭狗肉というか、広告…
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連載11946回 自分への暑中見舞 <3>
(昨日のつづき) 雑誌『文藝春秋』で準備中の『昭和万謡集』は、昭和の<忘れえぬ曲><時代を象徴する歌>を選ぶ催しだ。不肖、私もスタッフの一員として参加している。 ちかぢか有識者を招いての座談会…
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連載11945回 自分への暑中見舞 <2>
(昨日のつづき) 悪いことは重なっておきるものだ。 これが私のモットーである。一つ何か厄介な問題が発生すれば、すぐに続いてさらに面倒なケースがおきることが多い。 逆に良いことは、それほど続…
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連載11944回 自分への暑中見舞 <1>
かなり前から、朝夕、体重を計って記入することにしている。 この20年ほど、ずっと一定の数字をたもってきた。これを私の個人的な平均体重ときめて、健康のバロメーターのように注目してきたのだ。 朝…