五木寛之 流されゆく日々
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連載9977回 言葉が死語になるとき <2>
(昨日のつづき) 「トシマって字を書けるかい」 ある大学生にきいたら、ニヤリと笑って、 「こうですか」 と〈年魔〉という字を書いてみせた。もちろん洒落である。しかし、なんとなく実感があって…
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連載9976回 言葉が死語になるとき <1>
先日、ある場所でご婦人がたとお喋りしていたら、一人の女性がこう言われた。 「イツキさんは、おぐしもまだちゃんとおありになって、よろしゅうございますねえ」 一瞬、なんのことだろうとキョトンとして…
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連載9975回 老いの自覚について <5>
(昨日のつづき) 脚が不自由になってから、周囲の人びとの様子がしきりに気になるようになってきた。 あらためて街を行く人を眺めていると、脚の不自由な人がやたらに多いことに気づく。杖をついている人…
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連載9974回 老いの自覚について <4>
(昨日のつづき) 元気で、いつまでも若々しく、というのが老人の理想像のように語られてきて久しい。テレビの番組なども、80歳を過ぎてポルシェを運転する老人や、スポーツ大会に若者と共に参加する高齢者を…
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連載9973回 老いの自覚について <2>
(昨日のつづき) なんともいたましい事件が起きた。相模原の障害者施設で19人が刺殺され、20人が重傷をおったという。 殺人未遂で逮捕されたのは、施設の元職員だったというから事態は深刻だ。犯人は…
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連載9972回 老いの自覚について <2>
(昨日のつづき) 午後、雑誌『週刊ダイヤモンド』のインターヴューのゲラと写真を返却。 『週刊ダイヤモンド』の取材とあって、社会問題とか、そんな話だろうと予想していた。いわゆる専門家や学者の意見は…
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連載9971回 老いの自覚について <1>
未曽有の高齢社会がやってくるという。統計の数字を参考にするまでもない。数百万の団塊の世代が、いっせいに高齢化するのだから当然だろう。 子供や若い人は減っていく。老人が激増する。当然のことながら、…
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連載9970回 永六輔の残したもの <4>
(昨日のつづき) 永さんは途中からテレビの世界に疲れたのだろうと思う。秒単位で仕事が進む状況では、たぶん自分の考えていることを十分に語りきれないと感じたにちがいない。 その点、ラジオはより個人…
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連載9969回 永六輔の残したもの <3>
(昨日のつづき) 本番開始前に、少し緊張しようと気持ちを引きしめる。半世紀以上も放送の仕事にたずさわってくると、テレビや録音の収録に慣れっこになってしまって緊張感がなくなるのだ。「五秒前、四、三、…
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連載9968回 永六輔の残したもの <2>
(昨日のつづき) 本日(19日)、午後6時からNHKラジオのスタッフとの打合わせ。ラジオ深夜便『聴き語り――昭和の名曲』の次の構成についての会議である。 会議といっても、固苦しい討論ではない。…
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連載9967回 永六輔の残したもの <1>
今日、というのは7月19日、連休明けの火曜日ということだが、今日の夜、10時からのNHK『クローズアップ現代』に生出演することになった。 急な出演依頼だったのは、たぶん本命の出演依頼者が出られな…
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連載9966回 ある大学生との会話 <5>
(昨日のつづき) 「大学を出て、一応ちゃんとした企業に就職して、停年まで働いて、その後はどう考えてるんだい」 「そんなこと考えちゃいませんよ。だって、これから30年も40年も後のことじゃないですか…
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連載9965回 ある大学生との会話 <4>
(昨日のつづき) 「イツキさんぐらいの歳になると、世の中の動きがあまり気にならないんじゃないですか」 「それはどういう意味だい。そろそろあの世行きの事ばかり考えてるというのかね」 「いや、そんな…
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連載9964回 ある大学生との会話 <3>
(昨日のつづき) 「このところ、にわかに死とか、老後の問題がクローズアップされてきたみたいだね。いろんなところで様々に論議されてるけど、どう思う?」 「へえ、そうですか。あんまりそういう傾向には気…
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連載9963回 ある大学生との会話 <2>
(昨日のつづき) 「最近の大学生は経済的に大変だという話をよく聞くけど、外から見ている限りは結構、快適に暮してるような気がする。ぼくらの頃のバイトなんて、ひどいもんだった。今は時給いくら、なんて求人…
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連載9962回 ある大学生との会話 <1>
「最近、どう? 本なんか読んでる?」 「あんまり読まないですね。それに本は高いし」 「冗談だろう。本ほど安いものはないと思うけどな。新書一冊が千円札でお釣りがくるんだよ。千円であれだけの知識が手に…
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連載9961回 すべての常識を疑え <5>
(昨日のつづき) 昔は血圧の常識は結構おおらかだった。年齢プラス90といったあたりが、上のほうで、あまり細かく気にしなかった。加齢とともに血圧はあがってくる。血管の硬化もそれなりに進む。老人はいく…
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連載9960回 すべての常識を疑え <4>
(昨日のつづき) 専門家という人びとがいる。私たちは世界のすべての知識をわがものにすることはできない。そこで専門家の意見に耳を傾け、行動の指針とする。 しかし、専門家というものは、はたして私た…
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連載9959回 すべての常識を疑え <3>
(昨日のつづき) 人はだれでも老いていく。「人生五〇年」といわれた時代は、それでも退場するときが決まっていた。70歳は古来まれとされていたのだ。 だから老化にともなう障害も、数少ない長老の義務…
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連載9958回 すべての常識を疑え <2>
(昨日のつづき) 「週刊現代」の医療と薬害についての記事が話題になっている。この問題はかなり以前から騒がれていたのだが、影響力の大きい週刊誌が大々的に取りあげたので注目されたのだろう。 週刊誌の…