鑑定士のナイショ話
-
日本の現代美術に群がる世界の富豪
このニュースには驚いた。先月6日、香港で行われたサザビーズのオークションで美術作家・奈良美智の「ナイフ・ビハインド・バック」が2490万米ドル、つまり日本円にして約27億円で落札された。この金額は、…
-
手塚治虫の単行本の表紙原画 著者遺族のものか出版社か?
マンガを美術品として取り扱うための障壁を考えるとき、そもそもマンガの原稿は誰のものかという問題に突きあたる。 鳥山明にサイン会で書いてもらった色紙。これは売買していいだろう。しかし、手塚治虫…
-
マンガが美術品になるには仕組みづくりと「鑑識眼」が必要
前回、マンガが美術品になる可能性について書いたが、今回はそれを阻むものについて書きたい。まずは真贋を保証する仕組みがないことだ。 高額な美術品には、公式な鑑定機関があることが多い。近代の日本…
-
最近オークションで見かけるマンガは美術品になり得るのか
最近、美術品オークションでマンガの原画や版画を見かけるようになった。今年5月のシンワアートオークションでは、MANGA特集があり、60点くらいが出品され、最高額は、手塚治虫の水彩画で880万円だった…
-
“指輪切断カッター”を持参してきた「押し買い業者」
今週も、怖い怖い「押し買い」の話をしたい。 一人暮らしのスミ子さんは傘寿の80歳。とにかく足が悪くなってきて、外出することも、家の片付けも満足にできない。週1回のデイサービスに来てくれる多恵…
-
怖い怖い…「不用品買い取ります」の巧妙で悪質な手口
同居していた父親が亡くなり、四十九日を終えた花子(63歳)は、相続の手続きや遺産のもめごとから、しばらく解放されて一段落していた。しかし、お昼寝もままならない。日中は相変わらず電話が鳴り響く。「01…
-
借金のカタに美術品を受け取り…“最後の手”に潜む甘い罠
羽振りのよかった知り合いの社長が、借金の申し入れに来た。社員の今月の給料が200万円不足なので、これを担保に貸して欲しいと差し出したのが一枚の絵画。だが、しばらくすると連絡が取れなくなり、社長の会社…
-
仲間には「帰ったふり」…欲しい油絵と市場での駆け引き
だいぶ前の話だが、ある日、市場へ行くと「きょうはあまり出物ないよ」と先輩に声をかけられた。遠目で荷蔵(競り品の控え場所)を見た感じでは、確かにめぼしい物がない。こんな日もある。たばこでも吸って帰るか…
-
焼き物は箱が大事 なければ業者の相場は二束三文に
掛け軸同様に、焼き物も箱が大事である。特に焼き物は、作品に対して作家の銘を入れるには、底の部分に刻銘、刻印するくらいしか方法がなく、またそれを第三者が見分けることが難しいためでもある。備前焼などは見…
-
リーマン・ショックから11年…今のバブルは大丈夫なのか
11年前の9月15日に起きたリーマン・ショックは美術市場にも大きな影響を与えた。その数日後に行われたニューヨークのオークション会場はガラガラだったそうだ。 実はリーマン・ショックは、日本の美…
-
掛け軸の価値は箱では分からない
掛け軸の価値は、箱で見分けがついてしまうのか? 確かに、我々は掛け軸の査定をする際に、中身を開けずとも、入っている箱で、ある程度の目安はついてしまう。良い物は良い箱に入っているのが常である。 …
-
本物の「日本の掛け軸」は蔵の押し入れには眠っていない
「掛け軸って中身より箱が大事?」と聞かれるが、これはあくまでもセットであることが大事だ。古ければ古いほど箱は重要で、そこにはいろいろな情報が詰まっている。 例えば「箱書き」。本人の箱書きか? …
-
掛け軸はほとんど偽物と思え 特に古ければ古いほど多い
「掛け軸ってほとんど偽物?」って聞かれることがある。確かに偽物は多い。特に古ければ古いほど多い。明治以前の掛け軸を我々は「古画」と呼んでいるが、有名な絵師ほど偽物ばかりだ。 谷文晁(1763~…
-
棟方志功と安川電機レプリカ
JR新青森駅構内には棟方志功の代表作「釈迦十大弟子」のレプリカが展示されている。レプリカといっても原寸大。志功の最高傑作であり、木版画の世界最高峰だけに存在感はある。 私も志功の作品に触れる…
-
この時期だから、「無言館」の声
信州・上田平には戦没画学生の絵を展示した「無言館」がある。真田家ゆかりの上田城を目の前にした上田駅から、別所線に乗り塩田町駅まで行く。終点には名湯・別所温泉がある。 どこまでも広がる田畑風景…
-
「断捨離」できないのは男性 女性は過去を振り返らない?
「男は過去を振り返る生き物」「女は過去を振り返らない生き物だ」と聞いたことがあるが……。 さて、われわれの仕事の現場でもそういった傾向は見られる。例えば出張で世田谷の豪邸に出向いたときのことだ…
-
ウブだし屋とのやりとり「それって複製じゃないですか」
だいぶ以前のことだが、“ウブだし屋”の唐沢という男から電話があった。ウブだし屋とは買い取り屋。たまに出物があると売り込んでくる。ベテランなのに詳しいのか詳しくないのか、つかみどころのないくせ者で本音…
-
度肝を抜かれたオークション プロは一瞬で価値が分かる
昔、ぶっ飛んだ画商がいた。10年ほど前の業者オークションでのことだった。会議室のような場所で、絵画の競りが淡々と進んでいた。すると、その画商が遅れて部屋に入って来た。ちょうどシャガールの版画を競り始…